第百二十七話 テラルの動揺
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第百二十七話 テラルの動揺
「馬鹿者が!」
シンクラインはまた怒鳴っていた。
「これで月も完全に地球人共に奪われただと!」
「はっ、申し訳ありません」
「これで」
「貴様等は一体何をしているのか!」
ここでまた怒鳴るのだった。
「これで月と火星が奴等に奪われた」
「はい」
「無論地球もだ。そして今は木星に向かってきているのだな」
「左様です」
「その通りです」
「このままではこの土星も危うい」
やはり彼は本拠地を土星に置いていた。
「いいか。木星に戦力を集中させよ」
「戦力をですか」
「そしてそのうえで奴等を叩く」
彼は言うのだった。
「そしてその指揮はだ」
「はい、それは」
「誰でしょうか」
「テラルに預けることにする」
名指ししたのは彼であった。
「よいな、総司令官はテラルだ」
「あの者をですか」
「そうだ、あの者をだ」
彼はまた言った。
「木星の司令官に任ずる。そして他の将官達も集めよ」
「はっ」
「それでは」
「そしてだ」
彼の言葉は続く。
「クロッペンだが」
「処刑ですか?」
「処刑しても何にもならん」
しかし彼はここではこう言うのだった。
「むしろだ。それよりもだ」
「それよりも?」
「どうされるおつもりで」
「働いてもらおう」
考える顔での言葉であった。
「ここはな」
「では処刑は」
「そうだ。中止してやる」
ニヤリと笑って述べるのだった。
「しかし罪は消えない」
「それでは」
「将軍は」
「そうだ。精々戦ってもらおう」
笑みが酷薄なものになった。
「死ぬまでな」
「わかりました。それでは」
「あらゆる戦力を木星に」
「あの地球の裏切り者達もいるな」
イノベイター達のことである。
「あの者達にもだ。向かわせろ」
「はい、彼等でしたら」
「既に木星におります」
「そうか。ならばよい」
それを聞いてまずは頷くのだった。
「それではだ。戦力を集めだ」
「はい」
「そのうえで」
「ロンド=ベルを殲滅する」
この状況でも彼は敵を殲滅するつもりだった。
「木星にだ。いいな」
「はい、それでは」
「戦力の殆どを」
こうして帝国軍はその戦力の殆どを木星に集結させていた。そしてそこにはあの風間博士もおり彼は早速盛んに主張していた。
「ここはだ。躊躇はならん」
「躊躇とは?」
「博士、それは一体」
「攻めよ」
彼は言うのだった。
「ロンド=ベルを攻める。それだけだ」
「そうだ、その通りだ」
「それしかない」
そして積極派が彼を支持するのだった。
「我等の数は圧倒している」
「ここはその数を頼むべきだ」
「いや、しかしだ」
「それはどうか」
そして慎重派がそれに反論する。
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