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ソードアート・オンライン〜ニ人目の双剣使い〜
悪意ある視線
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てるんだけど……でも、そのせいで、今の自分と、現実の自分も、まるで別人みたいに……」

シノンの瞳に一瞬影が差す

「……?」

キリトはわけがわからなかったみたいだが、シノンの現実……朝田詩乃を知る俺にはその意味が完全に理解できた。だから、次の言葉が自然と口に出ていた

「リアルとバーチャルを完全に切り離すことなんて出来はしない」

「え?」

「どんなに取り繕っても、どんなに猫を被っても本質は変容しない。だってその人は、その人だから。俺は俺だし、キリトはキリト。もちろんシノンもシノンだ」

「……考えておくわ」

俺のその言葉はシノンには届かなかったようだ

「……そろそろ、予選の会場に行かないと。って言っても、ここの地下なんだけどね。準備はいい?」

「ああ……」

俺とキリトがうなずくとシノンはこっち、とエレベータのところまで先導してくれる

エレベータに乗り込むとシノンは迷わずB20Fのボタンを押した。エレベータは架空の落下する感覚を与えてくる。待つこと数秒。エレベータが開く。そこは広く薄暗いホールだった。天頂部の多面ホロパネルには【BoB3 preliminary】の文字とカウントを続ける数字。そして壁際に存在するテーブルや椅子。そして、そこに座るプレイヤーたち

「……はぁ……」

新しく来た新参者に向けられる粘っこい視線。悪意は感じないが測るような、試すような視線に嫌気が差す。そういうあからさまな視線は怖くない。わかっているなら対処できるし、軽くひねりつぶせる。だが、その逆。そういう視線をコントロールできるやつが怖いのだ

微弱な視線。粘っこい視線の中で消えてしまいそうな視線だが、俺は確かに感じた。そちらに視線を向けると壁の隅の暗がりでこちらを見つめるギリーマントで骸骨を模したであろうゴーグルをつけたプレイヤーが一人

「……どうしたの?」

「なんでもない」

シノンが肘でつついてくる。俺はそいつから視線を切るとシノンに微笑む。……シノンにむいていた視線の半数がこちらに来たんだが……(熱っぽい視線が複数)

「まず、控え室に行こう。あなたたちも、さっき買った戦闘服に装備替えしないと」

「そうだな。……キリト?」

キリトの方を見ると微妙に腰が引けている。……本当なら回し蹴りを打ち込むところなんだが、自重して頬をつねる。……なんか生暖かい空気になったんだが

「はい、行くぞ」

「……わかったよ」

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