アインクラッド 前編
思わぬ懺悔、そして攻略へ
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「え……?」
今度はキリトが驚く番だった。何せ、一歩間違えれば、マサキはいつ死んでいてもおかしくなかったのだ。確かに彼の見せたセンスは他人のそれよりも頭抜けていたが、だから安全という訳ではない。現に、既に千人以上の人間が亡くなっていて、その中には今日のキバオウが言っていたように、他のMMOでトップを張っていた連中も混ざっている。そのことを考慮すれば、マサキにはもっと重い罰を自分に与える権利があるはずで、実際、キリトは例えアイテムとコルを全て渡せと言われても、それに従うつもりでいたのだ。
「二度は言わないぞ」
あからさまに困惑しているキリトに対し、マサキは穏やかな微笑と共に告げる。すると、マサキの予想通りにミスリードされたキリトは、肩を震わせながら掠れた声で何かを呟いた。あいにくとそれはマサキの耳には届かなかったが、マサキの目は、キリトの唇が「ありがとう」の音を出すときの形に動いたのを見逃さなかった。
翌日、マサキとトウマが三度噴水広場に向かうと、既にそこにはキリトとアスナの姿があった。ここでマサキがちらり横目で隣を見ると、一瞬だけトウマの表情が崩れるのを視界の端で捉える。アルゴの時もそうだったが、どうして彼は二人の時とこうも態度が違うのだろうか。マサキとの初対面の時も似たようなものではあったが、あの時は一日でかなり変わった以上、ただの人見知りだということは考え難い。そのほかにもう一つ、マサキとしては見当を付けていたのだが、どうにも理由として弱い。考えられなくはないのだが、それだけでここまで弱気になるのかと問われれば疑問が残る。
(まだ情報が少なすぎるか)
マサキは今の段階で結論を出すことを諦め、思考中にすぐ近くまで辿り着いた人物の肩――もちろん片手直剣使いの方だが――に手をかけ、振り向いたところで挨拶を交わす。相も変わらず線の細い顔からは、昨日の不自然さはもう感じられなかった。
その後、しばし四人でボスについて話し合っていると、茶髪をいくつもの棘状にカスタマイズした男性が、招かれざる客としてこちらにやってきた。
「おい」
こちらも以前と変わらず非友好的な濁声。キリトが振り返ると、そこに立っていたキバオウはただでさえ人相の悪い顔をさらに憎々しげに歪めながら四人を睨みつけ、いつもよりも一層低い声で言った。
「ええか、今日はずっと後ろに引っ込んどれよ。ジブンらは、わいのパーティーのサポ役なんやからな。大人しく、わいらが狩り漏らした雑魚コボルドの相手だけしとれや」
言いたいことを散々一方的にのたまった後、キバオウは仮想の唾を道に吐き出してから身を翻した。
「…………」
「……何、あれ」
マサキがおどけたように肩をすくめる隣で、アスナが呟いた。彼女の視線にキリトが気付
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