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八条学園怪異譚
第十八話 トイレの花子さんその八
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「どっちでもね」
「開いているおトイレしかないから」
「ううん、そうなの」
「掃除用具入れのところもよね」
「掃除用具がないとお掃除出来ないでしょ」
 掃除をしないトイレ程汚くなるものはない、排泄物こそが汚物でありそれを放置していること程不潔なものはないのだ。
 だから掃除用具入れは掃除用具入れとしてしっかりと扉が開閉出来る様になっているというのである、そういうことだった。
「だからそっちはね」
「余計になのね」
「しっかりしてるのね」
「そうよ、まあどうしてもっていうのなら調べたらいいから、二人でね」
「いや、学園全体のおトイレなんてとてもじゃないけれど回れないから」
「男子トイレはなくても」
 花子さんは女の子なので女子トイレにしかいない、だから男子トイレは除外していいがだ。
「女子トイレだけでもどれだけの数になるか」
「移動だけれど大変じゃない」
「それにうちの学園で開かずのトイレとかないし」
「便器の故障位よね」
「便器も壊れるものよ」
 花子さんもこのことは頭の中に入れていた。
「水洗はね」
「そうよね、じゃあやっぱり」
「おトイレにはないのね」
「ないわよ」
 はっきりと答える。
「少なくとも八条学園にはね」
「じゃあ今回はこれで終わり?」
「そうみたいね」
 二人は顔を見合わせて話した。
「何ていうかあっさり終わったわね」
「いつもまだまだあれこれあるのにね」
「というかおトイレにそんなにいたくないでしょ」
 花子さんはその二人にこう言った。
「そうでしょ」
「まあ、用を済ませて手を洗ったらね」
「それで出るけれど」
 鏡の前で身だしなみを整えることもあるがそれはそれである。
「おトイレの中に長い間いても意味はないし」
「すぐに出るわよ」
「でしょ?おトイレは用足しとかだけに使うの」
 花子さんは何故か厳しい口調になった。
「それ以外に使ったら駄目よ」
「ひょっとしてそれって」
 愛実は花子さんのその口調から気付いた、眉を曇らせての言葉だ。
「いじめとか?」
「そう、おトイレの中って外からは見えないでしょ」
「ええ」
 扉で隔てられている、だからこちらの世界とあちらの世界の境目となっているのだ。トイレは特殊な空間でもあるのだ。
 そのトイレの中で行われるいじめ、花子さんは二人に対してこのことを不機嫌な顔でこう言ったのである。
「だからいじめもね」
「あるのね」
「正直嫌なものよ」
「ううん、いじめってね」
 愛実は入学当初のあの聖花に対する鬱屈した気持ちを思い出して彼女を見ながら言った。それは自自身に対する劣等感でもあった。
「やる人間って何ていうか」
「病んでるのよね、心が」
「そうなのよ。そういう奴がやるから」
「嫌なものよね」
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