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失われし記憶、追憶の日々【ロザリオとバンパイア編】
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第十話「慰安旅行」
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日こんな気持ちの良いものを味わっているのですか……。他の妖怪や動物たちも見習うべきですね」
「妖怪や動物たちが湯に浸かる、か。なんというか、ほのぼのとしているな」
猿が湯に浸かるなら分かるが、狐や爬虫類型の妖怪たちも一緒になって湯に浸かる姿を想像してしまった。ある意味では絵になるな。動物愛護団体のポスターにもなれそうだ。
「そうだ、本当はここでするようなことじゃないが、丁度大量の水があるから一つ面白いのを見せてあげよう」
「――? なんですか?」
不思議そうにこちらを見つめるハクに微笑み、魔力を練った手を水面に浸す。
「まあ、見てな……。――水よ舞え」
魔力が浸透すると、やがて水面から水の塊が一つ、二つと浮き上がっていく。その数は次第に増していき大小様々な水球が宙に浮かんだ。
「わぁ……」
光が反射してキラキラと輝く水の玉。その幻想的な光景にハクはしばしの間、言葉を失った。
「さらにはこんなことも――水よ踊れ」
水面から新たに水の塊が浮き上がり、やがて人型を成す。一メートル程の大きさを持つ人型は、新たに生まれた人型の手を取りクルクルと踊り出した。
「音楽があれば尚のこと良かったんだがな……って、聞いてないなこれは」
見れば、ハクはすっかり幻想的な空間に魅入られているようだった。目を輝かせて悔いるように見つめるその姿は狐といえど、人間の子供と大差ないのだなと改めて思う。
他の客が現れるまでの十分間、ハクは一言も喋らず、只々目の前の光景を食い入るように見つめていた。
† † †
すっかり満足したらしいハクを頭に乗せた俺は大広間に向かった。昼食の準備が出来たとのことだ。
「ほぅ、これはまた豪勢な」
「コン!」
メニューは小鍋に刺身、山菜の和え物、お吸い物、お新香、そして松茸のご飯だ。しかも刺身には鯨尾の身にカワハギ、大トロなどもある。
ハクの方は食べやすいように一口サイズに切り分けた神戸牛の霜降り肉をシンプルに塩だけで味付けしたもののようだ。確かになんでも食べると事前に言っておいたが、まさかこんな最高級の肉が出るなんてな。先程から肉を前に凝視しているし。
「では、いただきます」
「コンコン!」
お決まりの言葉を口にして、早速、鯨尾の身から箸を伸ばす。
「うん、初めて食べたけど旨いな。まるで肉みたいだ」
肉と聞いて耳をピクッと動かすハク。意外と食い意地張ってるんたな。
「ほら」
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