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失われし記憶、追憶の日々【ロザリオとバンパイア編】
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第十話「慰安旅行」
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俺たちを出迎えてくれたのは本館の女将である坂田さんだ。三指をついて丁寧に頭を下げる彼女に俺も頭を下げる。
女将の坂田さんは三十代後半の妙齢の女性だ。藍色を基調とした着物を着て、艶のある黒髪を後ろで結い上げている。
「はい、こちらこそ宜しくお願いいたします。そちらが白夜様ですね」
俺の懐から顔を出したハクの姿に女将さんが微笑む。
「ええ。ほら、ハク。挨拶をしなさい」
「……コン」
ジッと女将さんを見つめたハクはプイッとそっぽを向いた。
「すみません、人見知りなところがあるもので」
「いえ、お気になさらず。可愛らしい子ですね。私、狐なんて初めて見ました」
「そう言って頂けると助かります」
お部屋にご案内しますね、と先導する女将さんの後をついていく。
「此方になります」
「ほぅ……」
案内された部屋は俗にいうVIPルームなのだろう。部屋は広く、外の景色を一望できる。バルコニーには小さな露天風呂に小さなリクライニング式の椅子とサイドテーブルが置いてあった。テレビも最新式のプラズマテレビでパソコンまで備え付けてある。
「いいんですか? こんな上等な部屋を使わせてもらって」
女将さんは口元に袖を当て上品に笑った。
「はい、存分にお使い下さい。本来なら私ども翡翠館一同を救って下さった須藤様から、お金は頂かなくても宜しいのですが――」
「それだと俺の気がすまない」
「――とのことですので、せめて最高のおもてなしをと思いまして、最上級のお部屋をご用意させて頂きました」
ここまでされると反ってこっちが恐縮なのだが。まあ、今回はその善意を素直に受け取ろう。
「では、ごゆるりとお過ごしくださいませ」
スッと音も無く扉を閉め退出する女将さんを見届けると、懐から飛び出したハクが小さく伸びをした。
「ん〜……! これで少しはゆったり出来ますねー」
「だな。ハクは初めての飛行機で疲れたんじゃないか?」
「そうですね。あんな経験は生まれて初めてです」
ぐてーっと地に伏すハクの姿に苦笑した俺は、その首に掛けてあるものに視線を向ける。
「ところで、首輪の調子はどうだ?」
「上々ですね。今のところはなんの問題もなく機能していますよ」
ハクの首には昨日、俺が渡した首輪が付けられている。
俺の『力』をふんだんに使用して造り上げたこの首輪はアダマンタイトを素材に黒色水を混ぜた物だ。そのため首輪は黒い大理石のような見た目をしているが、既存の金属を遥かに上回る硬度を誇る。
そして、何よりこ
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