第5章 契約
第52話 共工
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天空を覆い尽くす氷で埋め尽くされた津波の如きそれが、大地を、そして、其処に立つ俺とタバサを押し潰し、押し流そうとして迫る!
「我は請う。我は霊樹の末裔なり」
その刹那、遙か上空より響く、若い女性の声。
「我は聖なる森の民なり」
そして、次の瞬間。俺と、タバサの周囲に撃ち立てられるヤドリギの矢。
大地ごと俺とタバサを叩き潰し、押し流そうとする水に対処する、大地に描かれた砦に、霊樹の加護を加える事により、結界に更に強化を施したのだ。
そう。強すぎる水の力を抑える為、樹木が根を張ってすべての土が流される事を阻む自然の摂理を呪的に利用した術。
全てを押し潰し、押し流そうとする巨大な津波と、霊樹により強化された霊的な砦の拮抗。
しかし、それも一瞬。その形を生かすかのような雰囲気で、全てを後ろへと受け流しながら、結界は未だ健在。
「御二人とも、無事ですか?」
魔風が吹き、巻き上げられた水が土砂降りの雨の如く叩き付ける空に浮かぶ影。闇色の魔女の帽子と、マントに身を包み、箒に腰掛けて浮かぶ姿は、絵本に登場する魔法使いそのもの。
霊樹の護り手モンモランシーが、風に煽られながらも俺の傍に着陸し、そう問い掛けて来た。
俺の顔を見た瞬間、金の魔女の精神に軽い違和感に似た何かを発したが、それ以上、何も問い掛けて来る事もなく……。
「今のトコロはな」
かなり気楽な雰囲気でそう答える俺。それに、確かに、今のトコロは共工の攻撃を捌いて行けているのも事実ですから。
しかし、相手に決定的な攻撃方法が無いように、コチラの方にも、共工に対して、有効な攻撃を与える術は有りません。
この場……水の勢いの強いこの場で、水の邪神で有る共工を倒すのは、ほぼ不可能。
先ず、戦場の雰囲気を、水行が支配する世界から、通常の空間に戻す必要が有りますから。
「タバサ、モンモランシー。五分で良いから、俺の代わりに結界を維持して貰えるか?」
俺の問い掛けに対して、首肯く蒼き吸血姫と、金の魔女。
刹那、共工の雰囲気が変わった。
俺達の見ている目の前で変わって行く共工。
その身に従えた数多の精霊たちはそのままに、人面蛇身の身体から、その容貌に相応しい女性の身体に変わって行ったのだ。
そして、その次の瞬間――――――――。
昏き闇の底で、蒼と青が交差した。
青玉の煌めきに包まれたその女性、かなり冷たい印象を与える冷徹な容貌を持つ美女。いや、冷たい印象と言う因りは、作り物そのモノと言うべきか。
人化が終わると同時に動き出した美女。その作り物めいた精緻な美貌を持つ共工が、精霊を纏いし刃で俺の描いた砦を無効化しようとした刹那、既に動き出
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