第5章 契約
第52話 共工
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えを返して来る湖の乙女。
それに、その答えならば、深い湖の底に封じて、普通の人間には簡単に近付けないようにして有るのも首肯けると言うモノでしょう。
例えば、俗物的に金を要求する人間が居たとして、その人間の一番大切な物が自らの生命だった場合は、生命を代価として差し出す事に因って、金を得る事が出来る、と言う事に成ります。
もっとも、その程度の事ならば問題はないのですが、もし聖人の如き人間が真の世界平和を望み、その人間に取って大切な物が生きとし生ける物すべてだった場合は。
世界は本当の意味で、平和な争いの無い世界へと変貌するのでしょうね。
生存競争と言う争いさえ存在しない、ありとあらゆるモノが消え去った世界へと。
ただ、其処まで完璧に現実を歪められるかどうかは疑問ですが、それでも、そう言う結果に近付こうとする事件が発生する、と言う事。
其処まで考えを進めた後に、俺は自らの腕の中に存在する蒼い少女を感じ、そして、自らが失う可能性の有るモノに思考を巡らせようとする。しかし、次の瞬間には、矢張り、その行為の無意味さに軽く頭を振って思考を停止させた。
そう。そのような行為は無意味。まして、無意識下の自分が何をもっとも大切にしているかなど、判らないのですから。
それにしても……。
再び、視線を深き水底に向けながら、思考は別の世界を泳がせ続ける。
成るほど。誰が湖底にそんな危険な井戸を封じたのかは判りませんが、それでもその行為は理解出来ましたし、更に、俺やタバサ。そして、現在、俺達と同じように避水呪を展開中の湖の乙女も、そのミーミルの水に直接、触れる事が出来ない事は良く理解出来ました。
おそらく、思考能力を持つすべての存在に取って、この湖の底に蟠って居るミーミルの水と言う存在は、非常に危険な魔法のアイテムと成る事は間違いないでしょう。
そして、それは戦闘時に、常に避水呪を展開させる領域を意識に確保した上に、同時に空気を発生させ続け無ければならないと言う事と成りますか。
水中での戦闘を行う限りは……。
その瞬間。水中を、凄まじい高速で接近する何かを、俺の探知能力が捉える。
いや、むしろ遅いぐらいか。もっと早い段階で、敵の早期警戒網に引っ掛かる可能性も有ると思っていましたから。
俺が対処を行う、それよりも一瞬早く、
「木行を以て雷と為す、降れ」
彼女独特の韻を踏むように口訣が唱えられ、翻った両手が導きの印を結ぶ。
その一瞬の後、上空……。いや、水面から振り下ろされる雷公の腕。
そして、刹那の内に消滅させられる小型の竜の一群。
竜で有りながら、雷撃が通用すると言う事は、俺や、そして、アリアとは種類の違う竜。
いや、厳密に言
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