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レンズ越しのセイレーン
Mission
Mission7 ディケ
(1) マンションフレール302号室~イラート海停
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を築いていたガイアスの分史。主君のナハティガルと訣別しなかったローエンの分史――

 悲運も見たが、同じだけ希望もあった。それら全てが、マガイモノのニセモノ?

(俺たちがやってることは、本当に正しいのか?)

 GHSが鳴った。ルドガーはソファーから起き上がって通話に出る。

『もしもし、ルドガー様。ヴェルです』
「また新しい分史が見つかったのか」
『いいえ。ユリウス前室長が道標を持って逃亡しました』
「兄さんがぁ!?」

 どこまで往生際が悪いんだあの兄貴は。ルドガーは頭を掻きむしった。

『目撃情報はイラート海停で途切れています。リドウ室長が捜索の指揮を執りますので、直接現地に向かわれてください』
「了解。わざわざサンキュー、ヴェル」
『これが仕事ですので。失礼します』

 通話が切られる。ルドガーはGHSの発信履歴を呼び出し、まずはエリーゼに電話をかけた。

「もしもし、エリーゼ。俺、ルドガー。今日、そっちにエルが行ってるだろ。悪いけど連れてきてもらっていいか? ……。ああ、仕事。……。いや、分史破壊じゃなくて。脱走した兄さん探し。……。ほんっと世話が焼けるよな。……。エリーゼも来てくれるのか? ……。いや、迷惑じゃない。すごく助かる。……。イラート海停だよ。……。ああ、じゃあ現地で」

 次に電話をかけたのはレイアだった。

「もしもし、レイアか? そう、俺。今そこにミラいるか? ……。いるな、よし。じゃあ伝言頼む。『仕事が入った。迎えに行くから支度して待っててくれ』。……。レイアも? お前、今日非番だろ? そんな出てきてばっかじゃ休めないんじゃないか? たまには俺に気を遣わずゆっくり……。ああ、そういうこと。はい、スクープになるよう頑張らせていただきマス。それじゃ」

 GHSを切り、筐体を畳んでホルダーに突っ込む。ルドガーは洗面台に行って最後の身繕いを終えると、カードキーを持って部屋を出た。部屋にセキュリティロックをかける。カードキーは玄関ポストに入れる。暗証番号はあらかじめ同居人全員に教えてあるから問題ない。

(常に他人がそばにいるのが当たり前になっちまったな)

 一人舗道を歩きながら、とりとめもなく考えた。
 にぎやかなのも友達が多いのも決して悪くはない。ただ群れに加わりきれないじれったさは解決できてないだけで。

(流れで集まったジュードの昔の仲間に便乗してるのが今の俺とエル。ミラに至っては居場所がないから仇の俺に協力せざるをえない。こう考えると俺たちって結構危ないパーティーじゃないか?)




 港に向かう前に、レイアのアパートに寄る。彼女のアパートは割と近所で助かっている。ミラだけなく、ルドガー自身とレイアも互いの部屋を行き来することがある距離だ。

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