第百十七話 風間博士の狂気
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「こちらの世界の人達は大丈夫って言うけれどね」
「はい」
ナタルの言葉に対して頷く。
「それは」
「けれどね」
しかしナタルの言葉は何かが奥歯に挟まったかのようだった。
「私はね。どうもね」
「艦長もですか」
「あの人、危ない人よ」
奇しくも忍達と同じ見方だった。
「目でわかるわ」
「目ですか」
「サングラスをしてるからわかりにくいけれど」
まずこう言う。
「それでも。その奥にある目はね」
「危険ですか」
「研究の為なら何でもするような目ね」
「そこまで」
「はい、その通りです」
今のマリューの言葉に応えたのはウェンディだった。
「私もそう思います」
「ウェンディさんもですか」
「バジルールさんも御聞きだとは思いますが」
珍しく張り詰めた雰囲気のウェンディだった。
「ゼツですが」
「確かラングランの」
「はい。人を犠牲にして研究を行っていた錬金術師です」
あの彼のことを話すのだった。
「彼と同じ目をしています」
「あの剣聖シュメルの頭脳を魔装機に移植したという」
「ロザリーの大切な人をそうやって殺した彼ね」
「その目と同じです」
こう二人に話すのだった。
「ですから。目を離せば」
「そうね。何をするかわからないわね」
また言うマリューだった。
「警戒が必要ね」
「ですが艦長」
ここでナタルは暗い顔になった。
「風間博士はこちらの世界の要人でもありますし」
「ええ」
「我々からは何の手出しもできません」
「そうなのよね。何もできないのよね」
マリューもこのことが歯がゆくして仕方がなかった。
「何をしてもね」
「少なくとも我々の世界の早乙女博士や大塚長官とは違います」
ナタルはまた言う。
「むしろ」
「三輪長官ね」
「はい、あの人です」
その連邦軍きっての問題人物だった彼である。
「あの人と同じです。このままでは」
「何かあってからじゃ遅いけれど」
マリューは達観したようにして述べた。
「何かがないとわからないものね」
「何かが、ですか」
「そうよ。何かがね」
マリューはまた言った。
「人間自体がそうだから」
「では艦長は」
「今は何もないことを祈るしかないわ」
こう言うのだった。
「今はね。それよりも」
「それよりも」
「これからのことだけれど」
とりあえず風間博士のことはこれで打ち切るのだった。打ち切るしかなかった。
「ガルラ帝国は遂に本気を出してきたわ」
「はい」
やはり話はこのことだった。
「かなりの数を投入してきたけれど」
「先の戦いでは百万を超えていました」
「物凄い戦いだったわね」
マリューも当然ながら前線にいて指揮を執っていた。アークエンジェルも何度も攻撃を受けエネルギーや弾薬の補給を必死に続けていた
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