第百十二話 赤い果実
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「そうね。ただ」
「それだけではないか」
「これは私が聞いた話だけれど」
こう前置きしてきた。
「どうやた脱獄した彼はすぐに何処かに潜伏したわけではないわ」
「潜伏したわけではない」
「そう。密かに誰かと会っていたわ」
「誰かと?」
ロジャーの眉がここでまた動いた。
「接触しているというのか」
「誰だかわかるかしら」
「わかれば苦労はしない」
エンジェルを探るようにして述べた。
「そういう話だな」
「そうね。それを言うことはできないけれど」
知ってはいるのだった。
「けれど面白い人よ」
「面白いか」
「そう。貴方も知ってる人よ」
ここではこう話してきた。
「貴方も。ただし」
「ただし?」
「貴方はその人のことは好きではないわね」
ロジャーの顔を見ながら話す。
「多分だけれど」
「私が好きとは思っていないのか」
「そうね。知ってはいるけれど好きではないわね」
またロジャーに話した。
「そういう人よ」
「ふむ」
ロジャーはエンジェルの話を聞きながら考える顔になった。
「そうか」
「お昼に行く場所は決まったみたいね」
「何度も言うが答えるつもりはない」
この場合の返答はもう決まっていた。
「それだけだ」
「あら、つれないわね」
「とりあえずだ」
ここまで話したうえでまた言ってきた。
「食事は終わった」
「御馳走様」
「私はすぐに仕事に向かわせてもらう」
「私もね」
とは言っても随分と余裕がある顔だった。
「やらなきゃいけないことがあるのよ」
「君もか」
「じゃあ。ステーキ美味しかったわ」
こう言って席を立つのだった。
「また。お邪魔させてもらうわ」
「食事なら好きな時に好きなだけ食べるといい」
ロジャーはそれはいいと言うのだった。
「私は他人に御馳走するのは嫌いではない」
「そうなの。気前がいいのね」
「私も必ず同席させてもらうが」
この前提があるにはあった。
「一人で食べるより二人で食べた方がいい」
「そうね」
「大勢ならさらにいい」
こうも言うのだった。
「飲むのなら一人だがな」
「相変わらず凝り性ね」
「私は私の主義に忠実なだけだ」
それだけだというのである。
「ただ。それだけだ」
「それが相変わらずなのよ。まあいいわ」
既に席を立っているエンジェルはそのまま扉に向かいそうして。
「また。お邪魔させてもらうわ」
こう言ってロジャーの部屋を後にするのだった。彼女を見送ったロジャーはまたドロシーを連れてグリフォンである場所に向かうのだった。
その車中でドロシーは。ロジャーに対して声をかけてきた。
「ねえロジャー」
「何だ?」
「これから何処に行くの?」
このことを彼に尋ねてきた。
「これから。何処に?」
「気にな
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