第百十二話 赤い果実
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「そうなの。かつては彼と敵対していたのにね」
「思うところがあったみたいね」
エンジェルはそう見ていた。
「どうやらね」
「それで彼は今どうしているのかしら」
「ロジャー=スミスと闘っていると思うわ」
冷静にミヅキに述べた。
「今丁度ね」
「そうなの。彼と」
ミヅキもまたバーボンをその手に持って話をしている。
「闘っているのね」
「ロジャーは今本当にこの街の謎を解こうとしているわ」
エンジェルはまたミヅキに告げた。
「本気でね」
「そう。本気になったの」
「そうよ。ただ」
「ただ?」
「今それに辿り着けるかどうかは疑問だけれど」
考える目で述べた。
「けれどね。それでも」
「それでも?」
「彼は諦めないわ」
確かな声での言葉だった。
「絶対にね。例えここで謎が解けなくても」
「何時かは必ず解くというのね」
「そういう人よ。それでミヅキ」
ここまで話してあらためてミヅキに顔を向けてきた。
「そっちはどうなのかしら」
「私の方?」
「そうよ。あんたの方はどうかしら」
少しだけ楽しそうに笑いながらミヅキに問うのだった。
「そっちの方は」
「まだよくわかっていないわ」
こうエンジェルに返した。
「今はね。何も」
「そうなの」
「あの人は確かに多くの謎があって」
彼女もまた謎という言葉を出した。
「そしておかしな人だけれど」
「ええ」
「それは仮面に過ぎないわ」
こう言うのだった。
「その真の謎は仮面の下にあるわね」
「そう。仮面の下にね」
「私はそう見ているわ」
ミヅキはこう考えていた。
「まだ確証はないけれど」
「そうなの」
「この街にも多くの謎があって私達の方にも多くの謎がある」
ミヅキは言う。
「この世界。どうなっているのかしら」
「さて。それを確かなものにするのが私達の仕事だけれど」
エンジェルはここでは言葉をぼやかせていた。
「順調にはいかないわね」
「そうね。予想以上にね」
「ええ。じゃあそっちはそっちでね」
エンジェルは今度はこうミヅキに告げた。
「頑張ってね。私も暫く調査を続けるから」
「わかったわ。じゃあまたね」
「それじゃあね」
こう言い合って二人は別れた。その間にもロジャーとアランの闘いは続き拳やミサイルを派手に撃ち合っている。だがそれも次第にロジャーに優勢となってきていた。
「やはり噂だけのことはあるな」
「私としては不本意だ」
彼はこうアランに返した。
「私の仕事はネゴシエイターだ」
「それは知っているぞ」
「ネゴシエイターは交渉で解決するもの」
これはもう言うまでもない。
「だからこそこうして闘いで解決するのは本意ではない」
「そうなのか」
「そうだ。不本意なことではある」
そしてこう言った。
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