第百十二話 赤い果実
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はさらに言葉を続けてきた。
「宜しいでしょうか」
「今私は仕事の依頼を調査中です」
ロジャーはまず彼にこう述べた。
「ですから」
「お受けできないと」
「申し訳ありません」
そしてここで断った。
「今の仕事が終わってから引き受けさせて頂きます」
「ですがおそらく同じでしょう」
「同じ?」
仕事は断ったが彼の話は聞くことになった。
「同じとは一体」
「私が頼む仕事の内容です」
ゴードンの顔は微笑んでいたが目は笑ってはいなかった。
「それはおそらく同じでしょう」
「同じというのですね」
「この街の記憶」
彼は言う。
「それを調べてもらいたかったのですが」
「この街の記憶を」
「そうではないのですか?貴方が今引き受けている仕事は」
「お答えすることはできません」
ネゴシエイターとしての倫理を口に出すのだった。
「それは」
「左様ですか。それは」
「はい。できません」
また言うロジャーだった。
「何があろうとも」
「それはわかっているつもりです。まあこれは憶測です」
「憶測、ですか」
「それ以上、それ以外の何でもありません」
一応こうは言いはする。
「ですから御安心を。忘れて下さっても結構です」
「わかりました。それでは」
「ただ。貴方に以前頼んだ依頼ですが」
しかしこの話はするのだった。
「それは思い出しては頂けませんか」
「申し訳ありませんが」
それはどうしても答えられないのだった。
「それは」
「左様ですか。では仕方がありませんね」
「そうですか」
「それでです」
ゴードンはここでまた言ってきた。
「まだお時間はおありですか?」
「時間ですか」
「はい。それはどうでしょうか」
こう彼に問うてきたのであった。
「宜しければコーヒーでも」
「コーヒーを」
「お話では黒い色のものがお好きだそうですが」
「それは否定しません」
はっきりとは言わないがその通りであった。
「黒はいい色です」
「では一杯宜しいでしょうか」
あらためてロジャーに勧めるのだった。
「コーヒーを。どうぞ」
「はい、それでは」
話は終わりロジャーは彼のコーヒーを受けた。こうしてここでの話は終わった。だが結局謎はここでも何も解決しないのであった。
「ロジャー、ここでの話は」
「同じだな」
車を運転しながら隣のドロシーに答える。
「ここでもな」
「そう。同じなの」
「むしろ謎は深まったと言うべきか」
彼は言う。
「農園に行ったことで」
「そう。さらになのね」
「ああ。記憶か」
まずそのことについて言った。
「それにトマトか。一体何なのだ」
「何もかもがわからないのね」
「さらにわからなくなった」
それを否定しない。
「だが。あの場所での話は終わった」
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