第百十一話 四十年前の記憶
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ね」
「彼はこの街を支配している」
またこのことを言う。
「ならこの街を知っていて当然だ」
「その謎のことも」
「支配するには知らなくてはならない」
ロジャーは真理の一つを言葉に出した。
「だからだ。彼は間違いなくこの街の謎を知っている」
「それで会いに行くのね」
「とはいっても話してくれるかどうかわからないが」
このことに関しては決して楽観してはいなかった。
「むしろ」
「むしろ?」
「その謎を突き止めようとする私に何かをしてくるかも知れない」
やはりアレックスを信頼してもおらず好意も抱いてはいなかった。
「その可能性も低くはない」
「そうなの」
「だが。それでも行く」
決意は変えなかった。
「私は。そしてこの街の謎を解こう」
「わかったわ。それじゃあ」
ドロシーは無表情で彼の言葉に頷いた。そうして二人でそのアレックスの屋敷に向かった。屋敷に着いた二人は応接間に案内された。そこは何もかもが白い部屋だった。白い壁には老人の大きな肖像画がかけられている。そして屋敷の主であり街の支配者でもあるアレックスと会うのだった。
「ロジャー=スミス君だったね」
「はい」
ソファーに座っているロジャーはアレックスの言葉に応えた。
「そうです。私がこの街のネゴシエイターの」
「話は聞いているよ」
アレックスはロジャーより先に言ってきた。
「君のことはね」
「そうですか」
「そして今日は何の用かな」
アレックスの方から彼に問う。
「僕のところに来たのは」
「この街のことです」
ロジャーは単刀直入に彼に告げた。
「この街のことで気になることがあるのですが」
「気になること?」
「はい、そうです」
また言うロジャーだった。
「この街はまず外から隔絶されています」
「そうだね」
「そして四十年前の記憶がありません」
このことも彼に話した。
「何故でしょうか。私がそれが気になっていまして」
「それで僕のところに来たのかい」
「その通りです」
また彼に率直に述べた。
「貴方なら何か知っているのかと思いまして」
「僕がか」
「貴方はパラダイム社の経営者です」
ロジャーはこのことも彼自身に話した。
「この街に大きな影響力を持っているパラダイム社の」
「だから僕がこの街の謎を知っているというのだね」
「違いますか?」
アレックスの目を見て問う。
「貴方なら御存知と思うのですが」
「トマトだね」
「!?」
今の言葉はロジャーにはわからなかった。
「トマト!?」
「いや、何でもない」
だが彼はロジャーに今は語らなかった。
「何でもない。失礼したね」
「そうですか」
「しかし君は前にここに来たと思うのだが」
またアレックスから先に言ってきた。
「確か。そうだったのではな
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