第一物語・後半-日来独立編-
第二十章 無意味な会議《3》
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ねえし、日来救って早くあいつも助けに行くか」
ここで一つの疑問も美琴は得た。まだセーランは、今日宇天長の解放のことを知らされていない筈だ。
疑問を抱く美琴に気付いたのか、セーランは言葉を付け足す。
「あいつの解放は、ほら、病院で俺に渡した手紙に書いてあった。あ、俺の流魔操作で作った人形って視野とか専用の映画面で見れるんだぜ、凄えだろ? どうせ飛豊が気を利かせたんだろうよ、あいつそういう奴だし」
あくびを大きく一つ吐き、空気を肺へと送った。腕を巻くように回し、こちらに近付いた。
眼前には、セーランの体がある。
「ちょっと動くなよ」
聞いた後、自分の体が宙へと浮いた。いや、セーランが流魔操作によって支えているのだ。
支えられていると解っていても、本当に宙に浮いているようなので何時もとは違う変な感じがする。
よし、と言う言葉が聞こえた。
「そんじゃあ飛ばして行くぜ、恐かったら掴まってろよ」
「え、あ、ちょっと、まって――!」
言葉の途中で、体が吹き飛ぶような勢いで宙を行った。空気を切り、足場を踏む音が聞こえる。踏む音は自分からではない、すぐ後ろに自分を追うように走るセーランの足が出す音だ。
何時から人形と入れ替っていたか分からないが、前の傷は治っているようだ。
流魔線を建物や地面に繋げ、それを縮めて機動力を得る。
監視艦や監視隊員に見付からないように、主に建物の影を利用して進んで行く。足場の多くは土だが、たまに監視の編み目を潜るように木製の屋根を足場にしたり、区域の地下へと入りコンクリートの地面を走る。なるべく音を立てないように、かかとから足場に着き、徐々に足全体を着ける。前に進むときも蹴飛ばすのではなく、足を後ろに押し進む感じだ。
縦横無尽に駆け巡る感じは初めて体験した。殆どの者は立体的な行動が出来るが、やはり持ち病のせいで体力面も劣っているため自分には出来ない。
何時から掴んでいたのか、セーランが着ている制服を掴んでいた。
セーラン本人は気付いているのかいないのか、何も言わずに前を向いていた。
風すらも味方とするように地下から出て地上を走るセーランに、後を押すように追い風が吹く。
背後でそれを感じ、更に加速した。
目指す場所は西一番外交区域社交領。
息を切らすも、体は動き続ける。足は今か今かと待ちわびることを忘れ、素早く動いている。身は前倒しになり、早く着きたいと言っているようだ。
何気ない顔でセーランは流摩操作を行い、次へ次へと自身を導いて行く。
●
今、会議は社交院優勢となりかけている。まだなりかけている程度だ、挽回は可能だと飛豊は考えている。
葉木原が行ったのは、言葉の加速と呼ばれるものだ。人は不安なときに、自身を勇気付けてくれる声に震え上がると言う。
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