第十七話 甲子園にてその十六
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「あと抗議王かしら」
「いい話ねえな」
「もう清原はそうよね」
里香も全く同情せずに言う。
「私子供の頃お父さんとお母さんに絶対に清原みたいな人とは結婚するなって言われたし」
「それあたしもだよ」
「私も」
「私もだから」
「私も言われたわ」
美優だけでなく琴乃に景子、彩夏もだった。その中で彩夏が言う。
「ああした人間と一緒になったら絶対に碌なことにならないって」
「そうなの、そう言われたの」
里香も彩夏に顔を向けてその通りだと言う。この話の最中も目はちらちらとマウンド上のルーキーをチェックしている。
「ああした人と一緒にいたら碌なことにならないって」
「ヤクザ屋さんみたいになるってね」
「どうしようもなく柄が悪くなるからって」
実際に両親からそう言われていたのだ、二人共。
「幾らその人に収入があっても駄目だってね」
「清原って女遊びも酷いからね」
「あれでしょ?夜の首位打者って」
「そっちばかりだから」
とにかく悪名は尽きない人物である。
「だからね。絶対にって言われてたわ」
「清原と元木、江藤は絶対に駄目ってね」
「言われたわ」
巨人の選手ばかりなのは関西だからだろうか。何はともあれその関西のチーム期待のルーキーがまた投げた。
三球目はストレートだった、その速球は。
かなりの速さだった、しかもノビが違った。
そのノビのある速球を見て里香は言った。
「いけるわね」
「いける?」
「先発で」
「うん、いけるわ」
ストレートまで見ての言葉だった。
「あのボールならね」
「ええと、球速は」
景子は甲子園のスコアボードを見た。そこに出た数字は。
「一五二キロよね」
「百五十超えね」
「ええ、超えてるわね」
しかもノビがある、そうしたボールだった。
「早々打てないわね」
「そうね。しかも高速スライダーとシュートもあるから」
里香は変化球のことも言った。
「いけると思うわ」
「期待の新人ね」
琴乃はメガホンを右手に持って振りながらこう言った。
「待ちに待った」
「そうよ。期待の新人登場よ」
「ここであのピッチャーが活躍してくれたら」
「三位どころかね」
里香も目を輝かせて琴乃に話す。
「一位にもなれるわ」
「それで優勝もね」
「なれるかもね」
こう言うのだった、目を輝かせたまま。
「期待していいかも」
「いや、阪神の若き救世主ね」
「高卒ルーキーだよな、あの人」
美優はこのことを確かめた。彼女もメガホンを持っている。見れば五人共メガホンに法被、それに帽子と虎の装備で固めている、勿論ポケットの中には風船がある。
「だったら怪我をしなかったら」
「二十年はやってくれるかしら」
「そうなって欲しいな」
美優の言葉に
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