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万華鏡
第十七話 甲子園にてその十三
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「それでもね」
「過度には、なのね」
「そう。そんなに願望を抱かないで」
「今の状況でベストを尽くすことなのね」
「何だかんだで何度か優勝してるし」
 むしろその回数は横浜ベイスターズより多い位だ。
「二リーグになってから何回優勝したかしら」
「五回よ」
 里香はすぐに琴乃に答えた。
「それだけよ」
「五回っていったらね」
「少ないわよね」
「私にしてみたらもう毎年優勝でいいから」
 阪神ファンのささやかな望みだ。日本国民としては巨人の毎年最下位も望む者が多いだろう。巨人は悪なのだから。
「少ないけれどね」
「それでもなのね」
「そう、五回優勝出来てるから」
「そこまで無茶言うことはないのね」
「落ち着いて観ればいいわよ」
 琴乃はまだ試合がはじまっておらず選手もグラウンドにいない球場を見ていた。選手達はまだベンチの中である。 
 三塁側の広島の赤いユニフォームが見える、その彼等を見てまた言う。
「阪神がどうカープに勝つかね」
「それを観ればいいのね」
「そう思うわ。それじゃあ」
「ええ、それじゃあね」
 里香も笑顔に戻って応える。そして顔を上げたところでだった。
 オーダーが発表された。五人はそのオーダーを最後まで聞いてこんなことも話した。
「先発がどうだろうな」
「微妙じゃないの?」
 景子は首を捻って美優に答えた。
「ちょっとね」
「微妙だよな、やっぱり」
「ううん、一年目のルーキーだけれど」
 マウンドにそのルーキーがいた、背番号の数は若い、それなり以上の期待を受けていることがそこからわかる、
 だがルーキーだ、それで言うのだった。
「どうかしら」
「わからないよいな」
「まだ実力はわからないわよ」
 景子は美優にこのことを話した。
「正直なところね」
「だよな。どうだろうな」
「この前の登板は確か」
「中継ぎだったわよ」 
 里香がこのタイミングで答える。
「それで好投したから」
「先発に抜擢されたのね」
「そういうことなの。中継ぎではよかったぇけれど」
「先発ではどうかしら」
「ピッチャーにも向き不向きがあるから」
 里香は今も心配そうな顔である。
「どうなるかわからないわね」
「そうよね。どうなのかしら」
「投げてみないとわからないわ」
 これが里香の今の考えだった。
「そうしないとね」
「正直不安ね」
「ええ。けれど誰だって最初はそうだから」
 誰でも最初はあくまでそうだ、投げてみてそうしてどういうピッチャーかわかるのである。このことは阪神以外のチームも同じだ。
 それで里香はこう言った。
「昔西武にいた郭tっていうピッチャーみたいな」
「その人どんなピッチャーだったの?」
「高速スライダーが凄くてシュートも投げられて」

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