第十三話 鏡月
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。
剣先をこちらに向けて、右片手で構えるそのレイピアのような構え。
その構えは……細剣だ。
「お前、なんだ、それ……!」
俺がそう疑問を口に出すと同時に、ソイツからエフェクトと共にそのスキルが放たれる。
そのスキルは知らないものじゃあない。
大剣の速度を遥かに超える速度で繰り出される、俊敏性に依存するスキル。
細剣のスキルの中では基本的なスキル、『リニアー』だ。
本来ならば大剣使いの俺なんかは反応することも厳しいはずのその速度の攻撃。
だが、俺はそれに反応できた。
相手から飛んできた剣先を、俺のグリュンヒルはしっかりと捕らえ、防御することに成功している。
そこで一つ、脳内に仮説が立つ。
……俊敏性が、無い……!?
しかし、先ほどの瞬発力。
あれはどうやって……。
そこで、再び脳内で仮説が立った。
筋力特化……!?
だとすれば、大剣を片手で持ったことも説明がつくし、あの俊敏性も説明がつく。
コイツは、文字通り、力任せに地面を蹴って、その一撃を繰り出したんだ……!
だからスキルエフェクトがない。
スキルを発動させる必要性がなかったからだ。
それに気づき、ソイツを見ると。
ソイツは一度だけ、営業スマイルを崩した後。
「どうやら、お気づきになられたようですね。 では自己紹介といきましょうか」
そこで一区切りすると、ソイツはあろうことか、空いている左手にもう一本の大剣を出しながら、自己紹介を始めた。
「私の名は『鏡月』、システムの穴を抜けるPK。 所謂、一般的にはバグ使いと認識してもらえばわかりやすいでしょうか?」
【Dirac】[序列二位]
[PK]
Kyougetsu[鏡月]
―Cheater―
《バグ使い》Lv81
バグ使い……。
確かに、MMOである以上、ゲームである以上、そういう存在は実在している。
だが、このSAOでは見たことがなかっただけに、その存在は衝撃的だ。
通常のMMOなら、間違いなく垢BANなのだろうが……。
SAOのシステム上では恐らく限りなくグレーゾーンなのだろう。
実際、その大剣二刀流でさえ、今現在、専用スキルがあったという情報は流れていない。
スキルが命であるこのSAOにおいて、スキルが使えないのは致命傷だ。
しかし、こいつはそれを逆手に取っている。
威力をステータス面の筋力で補助して攻撃力を底上げしているのだろう。
「……バグ使い、ね。 PKってのはどうもロクなのがいねぇな。 それより、俺の自己紹介は必要か?」
俺がそう口にすると、鏡月は首を横に振る。
「必要ありませんよ。 アルス様。 それと、そこにいる方々も自己紹介はいりません。
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