第二十一話 謀議
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た。もてなしは要らんそうだ。一体何が楽しみで生きているのか……」
俺の言葉に補佐官が冷笑を浮かべた。
「主教のおもりも大変ですな、それで如何なりました」
「向こうでやるそうだ」
「ほう、ではこちらは」
「有難い事に何もする事は無いそうだ、大分自信ありげであったな」
「それはそれは……、手を汚さずに済むという事ですか」
ルパートがまた冷笑を浮かべた。あまり見ていて楽しいものではない。
「結果的にボルテックの失敗は悪くなかったようだ、結果的にだがな」
「なるほど」
「こちらはじっくりと見物させてもらおう、成功を期待してな」
「そうですな」
ルパートがまた冷笑を浮かべた。
帝国暦 489年 5月 15日 アムリッツア ヴィルヘルム・カーン
「それで、何か分かったか」
『分かりませんや、動きが全くねえんですから』
投げやりな口調だな、この野郎……。口だけじゃねえ、顔まで不貞腐れていやがる。
「ヨハン・フレーベル、てめえ、不貞腐れてんじゃねえ。もう五日だぞ、五日! 何も掴めねえとは何事だ!」
『そんな事を言っても……、相手は寝たきりですからねえ、爺さん。手の打ちようがねえですよ』
溜息交じりの声だ。駄目だな、不貞腐れる以上に参っている……。
「男爵本人から話を聞けなんて言っていねえだろう、他は如何なんだ、使用人はどうだ、誰かと接触はしてねえのか」
俺の問いかけにフレーベルは首を横に振った
『駄目ですね、主が寝たきりだと屋敷の人間も殆ど外に出ねえ。全然動きがねえんです』
溜息が出そうだな。五日もかけて何も出てこねえとは……。いや、出る出ねえよりも動きがねえ、こいつが一番厄介だ。親っさんの杞憂か? しかしな、まだ始まったばかりだ。それに親っさんの懸念は有り得ねえことじゃねえ。そしてキュンメル男爵は確かに予想外だ、それだけに成功する可能性は有るだろう。
『爺さん、これ、いつまで続けるんです。みんなウンザリしていますぜ。妙な動きは無いか探れと言われても相手は寝たきりの病人なんだから……』
「グタグタ言うんじゃねえよ。相手はローエングラム公の側近、お嬢様の親戚なんだ、目え光らせる必要が有るだろう」
『だったら海賊屋敷の連中にやらせればよいでしょう。なんで俺達が……。大体昨日はお嬢様が来ましたからね、もう少しで海賊屋敷の連中と鉢合わせするところでしたよ』
「連中じゃ駄目なんだよ。誰にも知られたくねえんだ」
駄目だな、フレーベルは納得していねえ。仕様がねえな、はっきりと言った方が良いか。金髪の暗殺と言えばやる気を出すだろう。それに囚われると妙な所で見落としをしかねないと思って敢えて言わなかったんだが……。今のままじゃ見えてる物も見過ごしてしまう。
「フレーベル
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