第二十一話 謀議
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「殺す事で黒姫一家を分裂させることは出来ぬか」
「……」
その事は俺も考えないではなかった。だが分裂するだろうか? 分裂するにしても直ぐという事は有るまい。そして黒姫を殺した時、真っ先に疑われるのはフェザーンだ。あまり面白い事ではない。
「不確定要素が多すぎるか」
「はい」
「所詮は意趣返し、そう言う事だな」
「……」
デグスビイ主教が頷いている。偏執狂では有っても馬鹿ではないか……。せめてもの救いだな。
「フェザーンの苦境を救い、帝国の力を削ぎ、同盟の国力を回復させる。それが必要だという事か」
「はい」
俺が頷くとデグスビイ主教が顔を近づけてきた、堪えろ。
「有るか、そのような方法が」
「同盟の国力を急速に回復させるのは無理でしょう。となれば時間を稼ぐしかありますまい」
「……」
青い眼がじっとこちらを見ている。重苦しい眼だ。
「ローエングラム公を……」
「殺すか」
「はい」
答えてから大きく息を吐いた。デグスビイ主教は即答した、やはり地球教もその事を考えたか。
「主導権争いで帝国を混乱させる、そう言う事だな」
「そうです」
「その混乱の中で黒姫一家を潰す……」
「不可能とは思いません、ローエングラム公の部下達は黒姫を必ずしも好んではいない……」
デグスビイ主教が“ウーム”と唸っている。ジロリとこちらを見た、寒気がする目だ。
「殺せるのか、ルビンスキー」
「そこが何とも……。何と言っても相手は帝国の支配者です、警備は厳しい。しかし他に手が有るとも思えません」
デグスビイ主教がまた唸った。
「ボルテックは使えぬか」
「帝国の、そして黒姫の監視が厳しいようです。難しいでしょう」
デグスビイ主教の表情が歪んだ。“詰まらぬ事をするからだ”と吐き捨てる、腹は立ったが黙って頭を下げた。
「やむを得ぬな、ローエングラム公はこちらで始末するほかあるまい」
大きな嘆息と共に言葉が出された。芝居がかった態度が鼻についたが神妙に相手役を務めるしかあるまい。
「と申されますと、そちらで手が有りますか?」
「うむ」
自信ありげだな、成功率は高いと見ている。
「……こちらでお手伝いできることは」
「無用だ、そなた達は帝国からも海賊からも目を付けられている。余計な事はしなくていい」
こちらの手を汚さずに済むのであれば望むところだ、精一杯申し訳無さそうな表情を作って一礼した。
話しが終わるとデグスビイ主教は饗宴の誘いを断って部屋を出て行った。やれやれ、一体何が楽しみで生きているのか……。狂信的な教条主義者と言うのはさっぱり分からんな。デグスビイ主教と入れ替わる様に部屋に若い男が入って来た。新しい補佐官、ルパート・ケッセルリンク……。
「お話はお済みですか」
「終わっ
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