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銀河英雄伝説〜その海賊は銀河を駆け抜ける
第二十一話 謀議
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状況は酷く悪い。地球教の戦略は帝国、同盟の共倒れだ。だが同盟は先年の帝国領侵攻で大敗、今回の内乱で弱体化した軍事力をさらに弱体化させた。一方の帝国は内部からドラスティックに改革されつつある。両者の国力差は開く一方だ、デグスビイ主教も認めるように共倒れは不可能に近い……。

この事態にどう対応するか……。帝国に肩入れし帝国に宇宙の統一をさせる、その後に帝国を乗っ取る。それも考えたがなかなかに難しい。乗っ取るにはそれなりの力が要る。だがローエングラム公がフェザーンの権益をどこまで認めるか……。いや、その前にフェザーンは何を以ってローエングラム公に協力するのか……。

財力……、内乱で門閥貴族を潰した今、帝国の財政は一気に改善した。ローエングラム公にとってフェザーンの財力面での協力は必ずしも必要不可欠のものではない。イゼルローン要塞が同盟に有るのならフェザーン回廊の通行を提案出来るが要塞はあの海賊が御祝儀としてローエングラム公に献上してしまった。全く碌でもない事をしてくれる。

つまりフェザーンには取引に使える決定的なカードが無い。ローエングラム公にとってフェザーンは変な権益を認めてまで味方にするより軍事的に征服してしまった方が面倒が無い存在だろう。或いは黒姫一家の対抗勢力としてフェザーンの権益を認めると言う可能性も有る。しかしその権益は黒姫一家よりも小さなものになるはずだ。これまでの貢献度の違いから言ってそうならざるを得ない……。

邪魔だな、やはり黒姫は邪魔だ。フェザーンのためには黒姫も黒姫一家も邪魔以外の何物でも無い。なんとか潰したいと思いボルテックに工作させたが上手く行かなかった。手強い相手だ、ボルテックはいささか黒姫を甘く見た。辺境の海賊と何処かで侮ったのだろう。軽視すべきではなかったし俺も注意すべきだった。ローエングラム公、そして同盟との駆け引きを見ても黒姫は互角以上に立ち回っている。

「フェザーンにとっても地球にとっても現状は満足できるものではありませんな」
「同感だ、そして嘆いてばかりいても仕方がない事も理解している。何か策が有るか?」
綺麗な青い眼をしている、しかし不快感を感じるのは何故だろう。多分視線に偏狭な執拗さを感じるからだろう。

「さて……」
「殺すか?」
「海賊を、ですか?」
「難しいか……」
デグスビイ主教の青い眼がじっとこちらを見ている。辟易する思いがしたが懸命に耐えた。眼を閉じ考える振りをする。五つ数えてから目を開けた、まだ俺を見ている……。

「不可能、とは思いません。しかし黒姫を殺しても黒姫一家が残るのではフェザーンの苦境は変わりません。そして現在の帝国と同盟の状況もです。あまり意味は無いでしょう」
「そうだな」
デグスビイ主教が俺の言葉に頷いた。そしてまた問いかけてきた。


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