第五話「正史編纂委員会」
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容易いことです」
「ええ。カンピオーネとはつまり日本でいう荒ぶる鬼神の権化、羅刹王の化身です。しかし信じられません……神を殺めるなんて奇跡を起こせる人間が、この日本であの方以外にいるだなんて」
「同感です。故に私たちも草薙護堂を本物だと信じなかった、いや、信じたくなかった。日本人のカンピオーネは海堂蒼蓮様が最初で最後だと。しかし、様々な証拠が重なりまして、一概にそうも言えなくなってきたのですよ。
グリニッジ賢人議会の報告によれば、草薙護堂は今年の三月――今から五か月前ですね、サルデーニャ島という南イタリアで、ペルシアの軍神ウルスラグナを倒し、カンピオーネに至りました。その後も四度、イタリアに訪れていますが、行く先々で大きな破壊活動が発生しています。つい最近三日前もローマに訪れたとの報告がありました」
「ローマに?」
「ええ。呼び付けた人物は魔術結社【赤銅黒十字】の若きテンプル騎士、エリカ・ブランデッリ・海堂。あの海堂蒼蓮様の妻です。幸いこの時は何も問題は起こらなかったのですが、曰くありげな神具を携帯して帰国しましてね」
「神具、ですか……」
「はい。ですので、その神具の鑑定もお願いします。厄介ごとだけは持ち込まないで頂きたいものですねぇ。ああ、そうそう。それと大切なことを言い忘れていました」
ポンっと手を合わせる甘粕さん。
「実はですね、各国の魔術結社では選りすぐりの美女を選別して草薙護堂に愛人として宛がおうと画策しているようなのです」
「あ、愛人……!?」
「はい。結社の幹部候補を個人的な愛人として送り込んで籠絡し、その力を存分に利用しようとの魂胆なのでしょう。私たちはまだ確証が取れていませんが、イギリスでは草薙護堂を『王』として認めているようです。それでですね、もし草薙護堂が本物の『王』だった場合に備えて私たちも他国に便乗しようなんて虫の良いことを思っていまして、出来れば彼と親密な関係を築きたいのですよ」
甘粕さんの言い様は理解できる。組織的にはそれが一番効果的なのも、納得はできないが理解できる。
なにを言いたいのか理解した私は、眉を顰めて目の前に座る正史編纂員会の使者をジッと眺めた。
「つまり、私にその方の愛人になれと、そう仰るのですね」
「いえ、強制はしません。こういうのはやはり愛が無いと続きませんから。ただ、出来るのであれば彼と良好な関係になれるように心掛け――ぶふぉっ!」
「シャオラァァァッ!!」
突然、室内に突風が吹いたかと思ったら、甘粕さんが吹き飛んだ。螺旋状に回転しながら頭から壁に激突した甘粕さんはそのまま崩れ落ちた。
「大丈夫か、祐理っ! ……ん? な
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