第五話「正史編纂委員会」
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い合って俺を独占したがっていた。その時に頻繁に使われたのが一日デート権だ。これを使用している間、つまり二十四時間内はデートの邪魔をしてはいけないとの暗黙のルールがあり、よくデートを尾行されたな。最後まで邪魔はしなかったが。
「最近はデートブームなのかね。ま、いいぜ。その日は一日オフにしとくよ」
「やった! ちゃんと空けておいてよね!」
上機嫌で部屋へと戻る鏡花を見届けて、俺たちも自室へ戻ろうとする。
「んっ?」
ふと超六感が働いた。今すぐ家を出てある場所に向かえと俺の勘が囁いている。今まで超六感が知らせる『予感』は外れたためしが無いため、全幅の信頼を寄せている。直ちに行動を開始した。
「すまん、ちょっと出かけてくる!」
「えっ、蒼蓮さん?」
「ちょっと蒼蓮!?」
「あらあら」
シリア、エリカ、シアの声を背に、庭に出ると一気に跳躍。ドン! という音とともに空気の壁を蹴って目的地へと跳んだ。
† † †
七雄神社――歴史は古いがそれだけで、有名というわけでもない。しかし裏の世界に携わる者にとってはいくつかの意味合いを持つ神社。
そんな神社は高台の上に位置する。鎮守の森とまではいかないが、緑に囲まれた神社は清涼感が溢れて中々心地よい。
いつものお勤めも終えた私――万里野祐理は拝殿から少し離れた場所にある社務所の一室で身支度をしていた。
時刻は午後の八時を過ぎている。白衣と緋袴を身に纏った私は鏡の前で髪を梳いていた。
愛用している瑠璃色の櫛で梳いていると、唐突に櫛が折れてしまった。サラサラした髪には櫛を折るような抵抗は感じなかったのにも関わらず。
「……不吉だわ。何か良くないことでも起ころうとしているのかしら」
漠然とした不安に駆られた私は櫛を置き、身支度を整えて社務所を出た。普通なら些細なことだと思い歯牙にもかけないだろうが、私の場合は違う。
これが凶報でなければいいが、と思いながら早足で拝殿へと向かう。すれ違う神職の方々が立ち止まり丁寧に頭を下げるのに対し、私も会釈する。十五歳の巫女を相手にするには過剰な対応だが、ここでは私が格上の存在だ。
「やあ、姫巫女。お初にお目に掛かります。少々お時間を頂けますかね」
不意に気軽そうな声とともに現れたのは一人の男性。よれたスーツ姿にメガネを掛けた殿方だ。どことなく草臥れた印象を受ける。
私を姫巫女と呼ぶからには彼も裏の世界に身を置く存在なのだろう。革靴で境内を歩いているのに踏みつけ
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