弐ノ巻
霊力
2
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そっとその頬に触れた。体温が戻ってきている。
眠っている兄上。あまりにも静かで、時折呼吸を確かめるために口の前に手を翳してみたりする。
思い出すのは、ぞっとするように冷たい腕。
兄上が倒れたのはあたしのせいだ。
二人を助けたかったからとはいえ、兄上に無理をさせてしまった。
姉上様も、義母上も、兄上のおかげで一命を取り留めた。義母上はだいぶ重症だけど…でも安静にしてちゃんと薬湯を飲んでいれば命は大丈夫と言われた。それもこれも全部兄上のおかげだ。
目の前で昏々と眠る綺麗な面を見詰める。
兄上、このまま、目が覚めないなんてことないよね、大丈夫だよね…。
「失礼いたします」
「…」
かけられた声に返事をしなかったけれど、遠慮がちに襖があいた。
侍女の小萩の顔がのぞく。
「姫様、少々よろしいでしょうか?」
「うん…なに?」
「実は…今、佐々の由良姫様がいらっしゃっていて、至急姫様にお会いしたいと…」
「由良が」
正直、今は知り合いに会う気分でもないけれど、ここにいても何ができるわけじゃない。
あたしは立ち上がった。
「行くよ」
「ご案内いたします」
「いいよ。どこにいるの?」
「それが…土間でございます」
「え?玄関じゃん。客間に通さなかったの?」
「はい。私どももお通ししようとしましたが、由良姫様がここでいい、とにかくはやく瑠螺蔚様をお呼びしてほしいと、そればかりで…」
困った顔で小萩は言った。
こっちも一大事だったけど、まさか佐々家もなにか起こってるんじゃ…。
あたしは緊張すると急いで土間に向かった。
「由良!」
「瑠螺蔚さま!」
あたしが駆け寄ると、由良はあたしの手を傷一つない柔らかな手でがっしりと掴んだ。
「お待ちしていました。はやくいらしてください!」
そう言ってぐいぐいとあたしを引っ張っていこうとする。
「由良、どうしたの!?何かあったの?」
「お話は向かいながらでもよろしいですか?」
「いいけど…そんなに緊急なの?」
「はい」
あたしは由良に手をひかれながら佐々家に向かった。
「で、何があったの。もしかして…不審な人が暴れて怪我人が出
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