弐ノ巻
霊力
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あたしは高彬にそっと声をかけた。
「高彬、言うのが遅くなったけど、助けてくれて本当にありがとう」
「いいんだ。瑠螺蔚さんが無事なら、いいんだ…」
高彬の優しさにじんとした。そうよ、高彬は昔から、二言目には『瑠螺蔚さん』で、あたしの後ろばっかり付いてきて、泣き虫で、でもいつも優しかった。
「あんた、どうしてさっきはあんなにぴりぴりしてたのよ。あたしになんとかできること?言ってよ。言うだけでも楽になるかもしれないし、それにあんたがあたしを助けてくれたみたいに、あたしだってできるだけあんたの力になりたいと思ってるのよ。」
さっきまでと違って、あたしも大分優しい気持ちになって柔らかく言った。
「…本当に、瑠螺蔚さんにはかなわないよ」
高彬はいきなり笑いだした。
ちょっと、大丈夫かしら。
「もう、いいんだ。恥ずかしいけれど、勝手に不機嫌になって勝手に八つ当たりしてた。由良には後でちゃんと謝っておくし、礼も言っておかなきゃ。」
「え、結局原因は何だったの?」
「ううん、こうやって瑠螺蔚さんが僕のところへ来てくれたから、もういいんだ」
どうやら高彬は言いたくないみたいだし、下手に掘り返してまた不機嫌になられても困るからあたしは何も言わないでいた。
高彬の手が回されたあたしの腰の後ろで組まれて、そのまま引き寄せられた。肩に高彬の頭がのっかって、鎖骨の辺りに呼気があたる。
あたしはいきなり居心地が悪くなった。
なんか、これってちょっと…へんな雰囲気というか…いい雰囲気と言うか…。いや高彬が相手じゃ色っぽいも何もないけれど!
「ちょっと、もう大丈夫でしょ?離しなさいよ。変なとこ触ったら承知しないからね」
「いやだ」
あたしは耳を疑った。
それ…は離したくない、にかかる「いやだ」よね!?変なとこ触るな、にかかる「いやだ」だったらぶっ飛ばすわよ!?
「離れたかったら、離れて。できればだけど」
「はぁ?あんた頭イカレたんじゃないの?」
そう言った途端、強く抱きしめられた。
あたしはカッと顔が熱くなって、思いっきり藻掻いた。
今まで何とも思ってなかったけど、強く引き寄せられたせいで、ひょろっこいと思っていたのに思ったよりしっかりしている胸板や、あたしが思いっきり暴れてもびくともしない体なんかをしっかり感じちゃって混乱していた。
「離してよ!離しなさい」
痛いのか痛くない
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