弐ノ巻
霊力
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うに見えたけどね?」
「あんた、見てたの!?」
「見てなきゃ助けられないよ」
「なによ!見てたのにそんな嫌味みたいにちくちく言ってんの!?あれはしょうがないじゃんか!あたしはあんたみたいに鍛えてるわけじゃないし、他にどうすればよかったのよ!むしろあそこまで持ったのを褒めてほしいわよ」
「…」
高彬がこっちを向いた。眉根が寄って、渋い顔をしている。
あまりにもじっと見てくるもんだから、あたしは思わず一歩引いた。
「え、な、なに…」
「今の話、どういうこと?」
「え…ど、どういうことって…見てたんでしょ…」
いやな予感がしてつっつかえつっかえ言うと、高彬はあたしの腕をさっと掴んだ。
「僕が見てたのは、瑠螺蔚さんが川に飛び込むその瞬間だけだけど。その後は慌てて瑠螺蔚さんを見失わないように追ったから周りは見ていないし。鍛えるとか、持つとか、どういうこと?」
「あ、えーっと…」
あたしはもごもごと口籠った。
や、やばい…自分で墓穴掘っちゃった…。
上手い言い訳も思い浮かばず黙っていると、高彬は掴んだあたしの腕にぐっと力を入れた。
「何したの」
「うちに、不審者が忍び込んできてて、戦ったんだけど、追い詰められちゃって川に飛び込んだの」
思いきって言うと、高彬は声も出ないようだった。
本当に何も知らなかったらしい。
佐々家は隣なのにあれだけの騒ぎが伝わってないとは思えないから、高彬が聞いていないか、由良あたりが気を利かせて伝えてないか、ね。
痛いわよ、なんて別に痛くもないけど手を振り払ったら、今度は両肩をがっしり掴まれた。
って、いたい、痛い!本当に痛い!普段はなよっとしていて、小さい頃なんて泣き虫の鼻たれだった高彬にこんな力があると思わなくてあたしはびっくりした。指の跡が残るんじゃないかと思うぐらいだ。
「瑠螺蔚さん怪我は!?」
「痛いわよ、離して!あたしはこの通り無事だから」
そう言うと、両肩にかかった手の力が緩んだ。
ほっとしたと同時に、高彬に抱きしめられた。
「よかった…!」
「…大袈裟ね」
そうは言ったけども、高彬の安堵が伝わってきてなんだかむず痒くなる。
高彬は川に落ちたあたしを助けてくれて…じゃなかったら本当に死んでたかもしれないし…。
その礼を言っていないことに気づいて
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