弐ノ巻
霊力
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たとか…」
発六郎が浮かんであたしはそう言ったのだけれど、由良はいいえと首を振った。
「瑠螺蔚さま、不躾なことをお伺いするようですが…兄上様と何かございましたか?」
「へ?高彬と?ないわよ、別に…」
言いながら待てよ、と思った。
発六郎に追い詰められたあたしは野洲川に飛び込んで、それをどうやら高彬が助けてくれたらしい。あの時あたし自分のことしか目に入っていなかったけど、よくよく思い出してみれば高彬もあたしと同じようにずぶ濡れだった。
緊急時だったから仕方ないと言い訳させてほしいけど、あたしはそんな高彬に礼を言うでもなく兄上のところへ翔んで…。
あたしはすっと血の気が引いた。
もしかして、高彬に見られた…?
あたしはその時無我夢中で、高彬なんて気にしてなかった。けど普通に考えて、あたしがいきなり走り出したら、後を追うわ、よね。
「た、高彬が何か言ってたの…?」
「いいえ。兄上様は何もおっしゃってくださらないのですけれど…」
由良は一瞬口ごもった。
「ですが…瑠螺蔚様の事だと思うのです。あんなに怖い兄上様は初めてで、私、どうしたらいいかわからなくて…」
「怖い?高彬が?」
高彬と、怖いというイメージが結びつかない。
しかも、妹を怯えさせるぐらいに顔や態度に出してるなんて、超理性先行型の高彬らしくない。
なにかあったのか。もしくは、あたしが消えるのを見てて…?でもそれじゃあなんで怒っているのかが分からない。怯えるとか、恐怖に駆られるとかならまだしも。
そんな話をしているうちに佐々家に着いた。
高彬は、自分の部屋の前の縁にいた。
片足を立ててその上に腕を乗せて座っていた。
「兄上様…」
由良がその横顔におそるおそる声をかけた。
「由良、今は誰とも会いたくないと」
こっちを向いた高彬の声が詰まった。あたしを見留めた瞳が大きく見開かれる。
「由良!」
それはあたしですら思わずびくっとするぐらいの大声だった。あの、高彬が妹の由良に向かって怒鳴るなんて思わなくて、あたしは驚いた。
「ごっ、ごめんなさい…でも、でも私…」
怒鳴られた由良は、かたかたと震えて、涙を零した。
あたしは由良の肩を慰めるつもりで優しく抱き寄せると、きっと高彬を睨みつけた。
「高彬!何があ
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