第8話 邪神の眷属
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高所より見下ろす街の景観は紅い色に染め上げられ、そこには青白き人工の光りが瞬くように煌めいていた。
そう、街灯の光りが。車のヘッドライトが。そして、家族団欒の明かりが。
自然が生み出す紅き光の世界の中に、無秩序で有りながら、ある一定の秩序に因り光を放つ青白き光が、まるで人間の多様性と言う部分を表現しているかのようで有った。
世界を紅く染め上げ、夕陽が沈みつつ有る世界の中心に存在する長門有希と言う名の少女。
有名な山から吹き下ろして来る冬属性の風がマンションの屋上で渦を巻き、彼女の短いスカートの裾をはためかせた。
冬の落日と、彼女が纏っている雰囲気。……そう。彼女独特のペシミズムとも言うべき寂寥感や、全てを知る覚者の如き雰囲気から発生する達観から、彼女をじっと見つめて居ると、何故だか涙がこみ上げて来るような気さえして来るそんな時間帯。
本来ならば、現在の拠点で有る彼女の部屋に帰って、本日得た情報を精査し、明日。いや、今晩からの行動の指針を決めなければならないのですが……。
「それで、一応聞いて置きたいんやけど、あの、妙に喧しい女の子の事は、聞いても良いのかな」
少し視線をずらし、更に、奥歯に物が挟まったような質問を行う俺。
但し、同時にこの質問に対する明確な答えが返される可能性は低いとも考えて居るのですが。
その理由は、あの少女と話している間に、彼女……。長門からの説明は為されませんでしたから。
もし、あの不思議な少女が何の禁忌もない相手で、彼女に関して俺に知られてマズイ事がないのなら、あの場で何らかの説明が行われているはずです。しかし、現実にはそうでは有りませんでした。
彼女、長門有希からは、あの不思議な少女と俺が接触している間には、その少女に関しては一切、説明が為される事は有りませんでしたから。
これは、あの少女に関しては、何らかの禁忌。俺に話しては問題が有る内容が存在する、と言う事なのだと推測出来ますからね。
……長門は真っ直ぐに俺を見つめる。その瞳と、彼女から感じるのは逡巡。
「あ、いや、無理に話す必要はない。長門さんの立場では話せない事は有って当然やし、俺は無理に聞き出したい訳でも無い」
少し慌てて、先ほどの質問を打ち消す俺。
そう。彼女にどのような指令が下されているのか判らない以上、不用意な質問は、彼女に対して造物主から下されて居る禁忌に触れる可能性が有ります。
そして、彼女が人工生命体で有る以上、自らの禁忌に触れるような行動は行えない可能性が有り、最悪、彼女が暴走、もしくは機能停止する事も考えられます。
流石に、そんな危険まで冒して聞き出したい事でも有りませんから。
「ただ、あの少女が今回の俺が異世界から跳ばされて来た事
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