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蒼き夢の果てに
第5章 契約
第50話 吸血姫
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消費し過ぎた霊力を回復させる為に……。

 ……やれやれ。俺は何を迷っているんだ。

 俺はため息のように息を吐き出した後、ゆっくりと一度瞳を閉じ、そして、もう一度開いて、彼女を自らの視界の中心に置いた。

 そう。それは、自らの覚悟を確かめる為の儀式。彼女を……タバサを護ると約束したのなら、彼女自身が止めてくれ、と言うまで俺は、俺の全能力を使用して彼女を護るのが正しい道。
 まして、彼女も。そして、俺の方も、それぞれの一番無防備で、安らかな寝顔と言うモノを晒しても平気な相手だったはずです。

 あの、彼女に因って異世界から召喚された日からずっと。

 それに、自らを精神支配から護る方法は、いくらでも有りますから。

 多分なのですが……。


☆★☆★☆


 そして、七月(アンスールの月)第一週(フレイヤの週)、イングの曜日。

 地下の大空洞の浄化も終わり、ヴェルサルティル宮殿の庭園の要所に樹木を植える作業に移ったその日。

「ラグドリアン湖の水位が急に増えだした」

 再び、呼び出されたイザベラの執務室……と言うか、書類と本に支配された部屋で、タバサと俺は、そうイザベラに言われた。

 しかし、そんな事をいきなり言われたとしても、俺としては、はい、そうですかと答えるしかないと思うのですが。
 それに、湖の水位が上昇すると言うのは、どう考えても、流れ込む水の量が増えたからで有って、そして、流れ出す水量がそれに追いつかないから起こる事態ですから、下流側。この場合は、トリステイン側の方から当たるべき事案だとも思うのですが。

「それで、その水位上昇の理由を調べて、どうにかしてくれ、と言う依頼が上がって来た」

 予想通りの命令を口にするイザベラ。
 ……と言う事は、俺が龍に変化して、タバサを背に乗せて山を崩して、湖の水を流す事でも期待していると言う事なのでしょうかね。このガリアのデコ姫さまは。

 もし、そんな事を望んでいるのなら、イザベラは俺の事を過大に評価し過ぎですよ。

 しかし、そんな俺の懸念を知らないタバサが、いともあっさりと首肯く。普段通りの透明な表情。そして、蒼い瞳で自らの従姉姫の事を映しながら。
 ……彼女も俺の事を過大評価しているのか、それとも、彼女に何か考えが有るのか。

 其処まで考えてから、俺は有る事実を思い出した。
 そう。あの蒼い光に包まれた世界に現れた少女の事を。
 ラグドリアン湖の精霊とは、夢の世界に現れた彼女……。湖の乙女と名乗った彼女の可能性が高いと思います。ならば、俺の方の独自の人脈で解決が可能の可能性も有りますか。

 そんな、大きな不安と、そして、彼女との再会に、何故だかほんの少しの淡い期待に似た何かを乗せて、今回の任務は
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