第5章 契約
第50話 吸血姫
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のように清く正しい振りをしたとしても、王家とは大体、似たような黒い歴史のひとつやふたつは持って居る物ですし、その事を指して、この家は呪われていると声高に叫び、王位の正当性に疑問を投げかけたとしても、無意味ですからね。
そして、妖精女王ティターニアについては……。
俺との契約を終え、すべての精神力を切らせたかのように四肢の力を失ったタバサは、俺の左の腕の中で安らかな寝息を立てていた。
但し、俺の方は彼女の感触を楽しむ余裕など、何処にも無かったのですが……。
突如、朱に染まる世界。そして走る――――――――。
「!」
左脚に力を籠め、体勢を崩さないように。
更に、声に成らない声を上げる。腕の中の彼女に気付かれないように、
そう。彼女をこれ以上、穢さないように……。
そして、何より意識を失った彼女を放さないように左腕に力を籠め、利き足ではない左脚に体重が掛かっても、身体の安定を崩さないようにバランスを取る。
しかし、その一瞬の後。
蒼き姫に因って塞がれた左手は使用出来ないので、彼女の意識が途絶えた瞬間に開放された右手で左目を抑える俺。
その右手の指の隙間を濡らし、手の甲から手首にまで赤き道程を作り、腕の中の蒼き姫に紅き彩を添えた。
一滴、一滴……。
白き絹に紅き珠を描き、淡く滲むように広がって行く模様。
刹那、俺の左に立つ翠の人影。
ひんやりとした繊手によって、彼女の顔を正面から見つめさせられる俺。
長い黒髪。東洋風の清楚な容貌。こちらの世界に来てから出会った少女たちの中では、一番、生まれ故郷を思い出させてくれる少女。
そして、紅き生命の証を流し続ける左目に、彼女の右手を押し当てて来る。
その瞬間。ひんやりとした感触に、ひとつ鼓動を打つ度に激痛を放っていた左目が少し癒される。
「霊樹と月の加護により、彼の者の肉と魂を癒したまえ」
歌うように、囁くように、彼女が呪を紡ぐ。
その呪が唱えられた瞬間、彼女の指先から放たれる霊気によって、俺の左目がゆっくりとでは有りますが、確実に癒されて行く事が判る。
………………。
…………。
そして、傷口を抑える彼女の指先と頬に当てられた手の平が、俺の体温により暖められた後、少し名残を惜しむかのような雰囲気を発しながらも、彼女に因り解放される俺。
ゆっくりと、乾いた血によって張り付いた左目を開いて行く。しかし、予想に反して、意外とその瞳はスムーズに開いて行き、その視界にも一切の違和感はない。
流石は、妖精女王。蟲、妖精たちを統べる女王。……と、その瞬間はそう思ったのですが。
しかし、
「あんた、その瞳の色は――――――――」
顔を上
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