第5章 契約
第50話 吸血姫
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雰囲気で……。
彼女は何も答えようとはしない。その身体に力は入らず、ただ、俺の左腕に全身を預け、その紅き瞳には俺を映し……。
肌の香り、そして吐息は媚薬。瞳は魅了の呪を帯び……。
俺は、流し続けていた紅い液体を一滴掬い取り、自らと、そして、普段よりも冷たいタバサのくちびるを淡く彩づける。
互いの呼吸を合わせ、触れ合った肌が、彼女の熱を伝えて来る。
タバサが差しのべた左手が、俺の右手と、指と指を絡めるようにして握って来た。
指と指。瞳と瞳。呼吸と呼吸。
そして――――――――。
俺と彼女は、四度目となる契約のくちづけを交わしたのでした。
☆★☆★☆
それでは、またもや時代が動いたので、その説明を少し。
先ず、ガリア国内で起きたのは、東薔薇騎士団のクーデターと言う事態でした。
イザベラとシャルロット。二人の姫の身柄を拘束した上で、王都リュティスでの決起。王城を奪い取った後、外国の軍隊を招き入れると言う形の。
もっとも、ガリアの諜報組織により、その程度の計画などあっさりと調べ上げられ、カウンター・クーデターに因り東薔薇騎士団の企ては全て阻止された、……と言う何ともお粗末な結果が残っただけでしたが。
結果、東薔薇騎士団は壊滅。騎士団の長ドートヴィエイユとその家系に連なる者。そして、当然、副長のアルタニャン家と、彼の本当の実家のカステルモール家なども連座させられる事と成りました。
ただ、ドートヴィエイユの弟の息子。オリヴィエ・ドゥ・シレーグ・ド・ドートヴィエイユと言う人物の消息だけが掴めない状況と成っているようなのですが……。
更に、東薔薇騎士団所属の騎士たちの出身地にもかなり問題が有ったようですしね。
確かに、地縁血縁で騎士団員が採用されるのは、多少は仕方がない一面も有るのですが、その構成員の大半が、俺の感覚で言うとフランスの出身などではなく、スペイン。地域から言うのなら、ガスコーニュ地方から、バスク地方と言う地方だとすると……。
まして、彼らの採用について紹介状に名を連ねたのは、旧オルレアン大公の息の掛かった貴族たち。
そして、そのガスコーニュ地方と言う地方を支配していたのは、オルレアン大公妃。つまり、タバサの母親の父親。タバサから見ると母方のお爺ちゃんと言う存在。
更に、オルレアン大公が不審な死を遂げた後の、クーデター疑惑が発覚した時に真っ先に取り潰された貴族でも有ったのですが……。
確かに、地球世界のガスコーニュ地方やバスク地方出身者は、忍耐強く、戦闘能力に秀でている上に、勇猛果敢な事から優秀な騎士と成る可能性は高いとは思いますが、ひとつの騎士団の構成員の大半が一地方出身の者で占められると言う事は……。
もっ
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