第5章 契約
第50話 吸血姫
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そして、ゆっくりと時間が過ぎて行く。刻一刻と俺から残りの体力と、そして、霊力を奪い去りながら。
そう。流れ行く紅き液体と、太歳星君を倒した後から漂っている鉄の臭いに似た臭気が混じり合い、周囲にはむっとするような赤いイメージを着けていたのだ。
「邪魔が入ったので、今日は帰らせて貰いますよ」
本当に、友人に対して一時の別れの挨拶を行うかのような軽い調子で、そう話し掛けて来るソルジーヴィオ。
その表情には最初から変わらない東洋的な笑みを浮かべ、
そして、最初から変わらない、狂気に等しい雰囲気を発しながら……。
「それでも……」
貴方と、そちらの少女にも興味が有るのは事実ですよ。
……と、そう、闇の底から聞こえて来るかのような声が聞こえた後、顕われた時と同じ唐突さで、暗闇の中へと消えて行くソルジーヴィオ。
そして、この瞬間に、俺とタバサ。そして、妖精女王とガリアの王女の生命が、今夜以降にも繋ぐ事が出来たと言う事でも有ります。
戦闘の気が緩み、少し、大きな息を吐き出す俺。これ以上、この場で戦闘が起こる事はないでしょう。ならば、後はこの穢された聖地を一度、簡単に清めてから脱出するだけ。
そう考えた刹那、左腕の中でタバサが軽く身じろぎをした。これは多分、意識を取り戻す兆候。
そして、次の瞬間。タバサが意識を取り戻したのが、彼女から発した雰囲気から理解出来ました。
但し、
「タバサ、お前、その瞳は一体……」
そう。彼女が意識を取り戻したのは、多分、間違い有りません。但し、彼女から発して居る気は、普段の落ち着いた雰囲気の彼女とは違いました。
身体全体に力が入らないように、全身を俺に預けたまま、その熱っぽいまでの紅い瞳で、じっと俺の横顔を見つめて居る蒼き姫。
アール・デコ調のドレスを纏う彼女の身体は、柔らかく、そして、少女と女性の間のたおやかな線を表現している。
彼女の肌が発して居る香りは甘く、普段とは違う色を帯びているかの様であった。
そして、タバサのそこだけは変わらない、少しひんやりとした指先が俺の頬に触れ、そのまま視線を外そうとする俺の視線を自らのそれに固定する。
その瞬間、
「離れな、シノブ! 今のエレーヌは危険だよ!」
何処か遠くから、そう叫ぶ声が聞こえたような気がする。
そして、次の刹那。白い腕が、まるで蛇のような滑らかな、そして艶やかな動きで俺の襟を掻き開き、
普段の彼女からは感じる事のない蠱惑に満ちた吐息を、首筋に感じた。
「俺を愛しているのか。それとも、単に渇きを癒したいだけか」
自らの首筋にくちづけを行おうとしたタバサの、そのくちびるを指で制し、そう問い掛ける俺。
自分でも驚くほどに落ち着いた
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