第4章 聖痕
第49話 太歳星君
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ない雰囲気。おそらく、一六,七歳の少年から青年への過渡期にある存在。背丈も俺と同じぐらいと思われるトコロから、百七十五センチメートル以上。服装は簡素な雰囲気ながらも、裕福な商人を思わせ、魔術師の証のマントはなし。
但し、何よりも珍しいのは、俺と同じ黒髪を持った青年だと言う事ですか。
その青年が、俺達が出て来た地下下水道に繋がるトンネル出口付近に有るせり出した踊り場から飛び立ち、そして、環状列石内部のブランシュー伯爵の元に軽やかに降り立って見せた。
しかし、その際に精霊の悲鳴は聞こえる事もなく、まして、杖を振る、呪文を唱える、などと言う予備動作も行う事も有りませんでした。
そして、
「お久しぶりですね、皆さん」
……と、その場に相応しくない挨拶を行う。登場時より続く、謎の東洋的笑みを浮かべたままで。
但し……。
「お久しぶり、と言われても、俺には、お前さんの顔にも、まして、声にも覚えはないんやけどな」
コチラ側のメンバーを代表するかのように、そう答える俺。もっとも、彼が語る皆さんの中に、俺が含まれていない可能性も有るので、この答え自体が間違っている可能性もゼロではないのですが。
しかし、突如現れた若い男は、彼に相応しい謎の東洋風の笑みを浮かべたまま、
「いえ。本当に久しぶりの出会いですよ、僕と貴方は。僕の方には、貴方に生命を救われた記憶が有るのですが、貴方の方には残っていないみたいですね」
……と、妙な事を言い出す。
しかし、生命を救った事と言われても、俺の方には……。
確かに、奪った命に及ばない可能性も有りますが、それでも、俺が助けた生命の数も少なくはないと思います。それに、奪った生命に関しては相手を覚えている事が最低限の礼儀だと思っていますけど、助けた相手の事までイチイチ細かく覚えている訳では無いので……。
この青年が、俺に生命を助けられたと主張するのなら、実際に彼の生命を救った可能性もゼロと言う訳では有りませんか。
「それなら、昔のよしみで、少し、手伝って貰う事は出来ないやろうか」
ほぼ攪乱の為のみで、そう口にしてみる俺。もっとも、この台詞は単なる時間稼ぎに過ぎない作業なのですが。
そう。イザベラを奪還するには、正面では俺が奴らの気を引いている内に、ダンダリオンの能力でタバサのコピーを作製して、本体の方のタバサにイザベラ奪還を依頼するしかないでしょう。
ただ、それでも、成功する可能性は低いので……。
太歳星君の召喚作業にどの程度の時間を要するかが、勝負の分かれ目と成るでしょう。
しかし……。
「良いですよ。他ならぬ、貴方の頼みです。一度、助けられた生命ですから、その恩に報いる必要は有りますからね」
予想外の答えを返
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