第4章 聖痕
第49話 太歳星君
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その場所……。狭くて暗い地下下水道から、更に地下深くに向かうトンネル状の構造を抜けた先は、急に視界の広がった、そして、地下深くに有るはずの空間にしては、微妙に光の有る空間で有った。
俺とタバサが顔を出したのは、大体、高さが五十メートルは有ると思われる断崖の途中。更に、上空に向かっては同じだけの高さが続いて居り、そこから緩やかなカーブを描く岩に覆われた天井が続く。
そう。ここは地下に広がる大空洞。大体、直径が二百メートル程は有るであろう半球体の空洞に、俺達は足を踏み入れていたのでした。
その、屋内野球場とも、サッカー場とも付かない巨大な空洞の中心部に存在する、これもまた巨大な石の建造物。そして俺には、あの巨石を用いた遺跡に関しても知識が有ります。
円陣状に並んだ直立巨石と、それを囲む土塁から成る、世界でもっとも有名な先史時代の遺跡のひとつ。
イギリス南部に存在するストーンヘンジそのものの姿が、其処に再現されていたのだ。
そして、その直立する巨石の輪の中央部に見える人影がふたつ。
ひとつは、その侍女風の衣装から、イザベラ姫と思われる少女が中央部に近い巨石の上に寝かされ、
もうひとつの大きな影は、遙か彼方。断崖の中央部のトンネルから顔を出した俺達を見つめていた。
俺と目が有った瞬間、そいつは出会った時から変わらない、……最初から彼の発して居た雰囲気に相応しい、邪悪なと表現すべき嗤いを浮かべた。
そして、
「そんな所から覗き見をするようなマネをするとは感心しませんな、シャルロット姫」
ポルトーの新領主。イザーク・デュ・ヴァロン・ド・ブランシュー伯爵が、俺達に対して、そう語り掛けて来た。
彼我の距離はどう考えても百メートル以上。しかし、ヤツの声は何故かここまであっさりと届き、俺とタバサを愚弄するかのような響きを伝えて来ていた。
「そんな場所から盗み見るようなマネを為さらずとも結構ですよ。そもそも、もっと近くから、私がこの国を滅ぼす様をご覧頂けるように、道を残して来たのですから」
自らの企てが失敗するとは思っていないブランシュー伯爵が、そう、俺達。……いや、タバサに対して話し掛けて来る。
そして、ここにタバサが現れて、彼の親友で有るはずの東薔薇騎士団副長のシャルルが登場していない事に気付いた上での、今の台詞で有る事は間違いない。
タバサの瞳を確認する俺。小さく首肯く彼女。
その答えを確認した後、普段よりも更に一歩分、彼女に近付き、その見た目のままの軽い彼女の身体を、そっと抱き上げる。
そして、
「元同僚の事について、聞いてやる事もないのか?」
タバサを抱き上げてから、高度五十メートルの地点より降下を行いながらそう聞く俺。
但し、あ
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