第5話
[1/4]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
昨日のように感じる俺の戦いも遥か過去に流れ去り、今は六月の頭。
久々に友人の弾に会うと言うことで一夏は居らず、転生して知り合いもへったくれも皆無な俺は手持ち無沙汰。
篠ノ之やオルコット、凰(ファン)とは一夏を通じて会話や訓練の指導に付き合ってくれるようになったが、特別仲がいい訳でもない。
ゼロはゼロでデートだとか。…凄く…、寂しいです…っ!
「勉強でもするか。無駄に絶対ならないからな」
寝転がっていたベッドから起き上がり、電話帳のような分厚さの参考書とルールブックを手に机に向かう。
ぼっちだからとか暇潰しの手段が無いからとか言う理由で勉強するのでは無い。
自分の為になるから勉強するのだ。ネガティブな理由では決して無い。
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
「あーっ、手が疲れた…」
「お帰り、何かあったか?」
ちょびちょび休憩を挟みながら勉強を続け、読破して少し後に一夏が帰ってきた。
「弾とエアホッケーして来た。記録更新」
「またコアなチョイスを…」
「トモも来れば良かったのに。弾が付き合い悪いってぼやいてたぞ?」
「気分が乗らなかったんだ。機会があれば顔を見せに行く」
一夏の言う五反田弾は友好的だが、妹の蘭はあまり俺を良く思っていない。
胸に何かしら秘めているのだろう、一夏と話を弾ませると面白く無さそうな表情をしていた。
と言っても、この記憶は神様が後付けで刻み込んだ物だから、実際はその場には居なかったが。
「そう言えば、来年蘭が此処を受けるらしい。受かったら指導するって約束して来たから、トモも出来る限り手伝ってくれ」
「…お前はそうやって安請負を…」
約束するのは勝手だが、お前に好意を抱く少女達の事も考えてやって欲しい。
時々嫉妬のとばっちりが飛び火してくるのだ、それが増えでもしたら恐ろしくてたまらない。
それ程乙女心は複雑で、苛烈な物なのだ。
「それはそうと…、うーん…」
「…悩み事か?」
一夏は問題は起こすが、コレといったトラブルは抱え込まない。
何かに悩むことは多くない。
「箒が、な。今月の学年別個人トーナメントに優勝したら、付き合ってくれって…、はあ」
一夏の溜め息を聞きながら、俺は感心していた。一夏と篠ノ之の両名にだ。
篠ノ之の勇気を出して一歩踏み込んだ事もそうだが、一夏がその是非で悩んでいる事に俺は感動した。
篠ノ之がもし優勝すれば、一夏は篠ノ之と交際を迫られるだろう。
しかし、その関係には、一夏の意志が放置されている。
篠ノ之の想いを尊重した上で、最善を尽くそうと悩む一夏の姿に、微笑ましくなった。
「勝てば何も問題は無いだろ?」
「いや、買い物位、いつでも付き合うのになってな」
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ