第一幕その四
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視主義者であり女性をことごとく遠ざけているあの王は当時女性から徹底的に嫌われていたのだ。当時のロシアの女帝であるエリザベータにしろルイ十五世に代わって実質的にフランスを切り回していたポンバドゥール夫人もまた彼が嫌いであった。理由は簡単で利害が対立しているだけでなく彼が女嫌いだからだ。嫌わば嫌われるというわけである。
「不愉快なだけですし」
「そうですな。私も政治の話をしにきたわけではないので」
男爵もそれに乗って話を止めるのであった。
「それではですな」
「はい。ええ、そこに」
家の者達が三つの小さなソファーを持って来ていた。置く場所をそこでいいと告げたのである。
「ゆっくりとお話しましょう」
「わかりました。それでは」
テーブルも置かれた。朝あった木製の白いテーブルと椅子は下げられている。オクタヴィアンは何気なくベッドをなおしている。それをメイドと見た男爵は興味深そうな目で彼女、いや彼を見ていた。
「可愛い娘ですな」
「新しく入った娘です」
「そうなのですか」
「ところでですね」
男爵に左の席に座るように手で告げてからあらためて彼に問う。自分は右側の席の前にいる。中央の席はわざとあけていた。
「どうしてこちらに」
「手紙のことで」
ちらちらとオクタヴィアンを見ながら答える。
「手紙のですか」
「一週間程前に着いていると思いますが」
外見に似合わず計算が上手かった。
「その内容にある通りです」
「左様ですか」
「はい」
答えながらもまたちらちらとオクタヴィアンを見ている。次第に好色さがそこに加わってくる。
「いいな。可愛いな」
「確か結婚されるんですね」
「そうです」
夫人に顔を向けて答える。だが目はやはりオクタヴィアンの方を始終向いている。
「確か」
「ファニナル家の娘です」
「そうでしたわね」
話を聞いてそれに頷く。実は手紙の内容を憶えていないとは流石に言えない。
「ファニナル家といえば」
「貴女の御主人の推薦で貴族になった家で」
「そうでしたわね。それで」
実はあまりよく知らなくて話を合わせているのである。
「ネーデルラントにいる我がオーストリア軍に調度品を供給している家です。貴女は私とあの家の娘の婚姻にいささか御不満のようですが」
「それは別に」
「こう言っては何ですが」
話す間に夫人はオクタヴィアンに目で部屋を出るように促す。オクタヴィアンもそれに頷く。オックスは話す間もずっとちらちらとそのオクタヴィアンを見ている。
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