第三幕その十一
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オクタヴィアンの言葉は続く。
「一つの宮殿の中に貴女がいて私は人々にその中に導かれ幸福の絶頂に導かれた。素晴らしい人達によって」
「私は不安で仕方がない」
ゾフィーもそれに応えて言う。
「天の入り口に立った時の様に。今にも倒れてしまいそう」
「僕の側に倒れて下さい」
「・・・・・・はい」
オクタヴィアンの中に抱かれた。全ては。これで完結したのだった。
「おや」
そこにファニナルが出て来た。少し休んで楽になり部屋に戻って来たのだった。彼は夫人のところにやって来て娘達を見て声をあげたのだった。
「若い人達はこうしたものなのですか」
「そうなのです」
夫人は静かに彼に答える。そして。
「去る者は。音もなく」
「そうですな。では私は」
まずは彼が去った。いなくなったのを見てから夫人もまた。愛し合い抱き締め合う二人にそっと背を向けて去るのだった。音もなくカーテンコールもなく。ただ一人去るのであった。
二人は夫人が去ったことに気付いていない。暗くなった部屋の中で誓い合っていた。
「貴女だけを感じて。一緒にあることを感じて」
「夢ではない。この幸せは」
二人で言い合う。抱き締め合いながら。
「私達が共にあることを。私の中にあるのは貴女だけ」
「こうして。永遠に共に」
「そう、永遠に」
それを二人で誓うのだった。その闇の中に消えていく。あとに残ったのはハンカチだけであった。それは元帥夫人の白いシルクのハンカチだった。だがそれを何処からか戻って来たアの黒人の少年が拾って走り去ったところで部屋は完全に暗闇の中に消えた。そうして静かにその中で舞台が終わったのであった。何かが永遠に戻らないことをその闇の中に隠しながら。静かに終わったのだった。
薔薇の騎士 完
2008・3・1
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