第三幕その十
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第三幕その十
「どうしてこんな。親切な御言葉さえも。挨拶さえも」
「それはもう私からは」
「私もです」
ゾフィーも言うのだった。
「どうしてこんなことを。私は」
「えっ、貴女は」
オクタヴィアンはゾフィーのその言葉を聞いて驚く。
「あの男爵とは」
「それはそうですけれど」
ゾフィーもそれは認める。認めはするが。
「それでも。こんなふうには」
「そうだったのですか」
「はい。恥ずかしいですし」
娘として。この騒ぎはということである。
「それに奥様が私をどう御覧になっているかわかりますし」
「ですが僕は」
ここでオクタヴィアンは。自分でも気付かないうちに決定的な行動に出た。遂にだ。
「違います。決して貴女を」
「あっ」
その手を取ったのだった。ここで。
「離しません。そして守ってみせます」
「ですが私は」
ゾフィーはそれから必死に逃れようとして言うのだった。
「お父様のところへ」
「ですが僕は」
オクタヴィアンも引き下がらない。
「貴女を誰よりも。何よりも」
「御口では何とでも言えるでしょうが」
「愛しています」
次の決定的なものであった。
「今それを貴女に告げます」
「それは本当ではありません」
ゾフィーはオクタヴィアンのこの言葉も拒んだ。言葉のうえでは。
「ですからもう私は」
「いえ。本当です」
オクタヴィアンも退かない。己の心に素直になっていた。だからこそであった。
「貴女は私の全てです。何があろうとも」
「忘れて下さい」
「私の想いは貴女にだけ」
また言う。
「貴女の笑顔を見ることを望んでいるのです」
「今日か明日か明後日か」
夫人はそんな二人を見ながら独白する。誰にも知られることなく。
「わかっていた筈。誰にも一度は来るこの日を。けれど私は」
悲しい。何かが壊れ死んでいき二度と戻ってはこないことを感じていた。寂しさと悲しさと共に。その中で彼女一人で呟くのであった。
「ああ、どうしようか」
「忘れて下さい」
二人のやり取りは続いていた。
「どうしても言葉がうまく出ない」
「忘れて下さい。貴方には」
「うっ・・・・・・」
彼女もわかっていたのだ。オクタヴィアンのことを。それを言われるとオクタヴィアンはついつい夫人の方を見てしまう。しかし夫人はその彼に対して。ただこう言うだけだった。
「どうしてそう迷っているの。迷うことはないのに」
「何故そのようなことを」
「お顔を見ていれば」
言葉はあえて他人行儀にしていた。オクタヴィアンを突き放すように。
「わかりますわ」
「僕は・・・・・・」
「私も」
ゾフィーも夫人に対して言う。自分が今どれだけ取り乱してしまっているかわかっていたから。
「ああしたこと
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