A's編
第三十話
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関心しながら見ていたのだが、どうも様子がおかしい。それが一番顕著に表れていたのが最後に現れたシャマルさんだった。
彼女は、怪訝そうな顔をして、ポニーテイルをしている女性―――シグナムさんに問いかける。
「ねえ、シグナム。彼女、私の名前知っているみたいだけど、あなたの知り合い?」
「いや、知らん」
「我にも心当たりはない」
「そういえば、こいつ、あたしたち全員の名前知っているみたいだったぞ」
……どういう意味だ?
僕には状況がつかめていなかった。彼らがはやてちゃんの家族であることはほとんど間違いないと思っていたのだが、それは間違いだったのだろうか。そう思って、僕ははやてちゃんに事情を聴くために彼らに合わせていた視線をはやてちゃんに移したのだが、彼女はまるで信じられないものを見たかのように驚愕に満ちた表情をしており、は、ははは、と乾いた笑い声を出していた。
「みんな冗談きついわ。なあ、冗談やろ? みんなは闇の書の守護騎士で、私の家族やん」
必死に、すがりつくように問いかけるはやてちゃん。その声からは冗談であってほしいと願っている様子だった。
だが、彼らの答えは非情で無情だった。彼らは、お互いに相談するように顔を見合わせた後、怪訝そうな表情をして、全員が首を横に振る。その仕草だけで、彼女たちがあの一瞬で何を話し合ったのかよくわかった。もちろん、僕の口からははやてちゃんには伝えられないが。
やがて、誰かが言わなければならないと思ったのだろうか、リーダーなのだろうシグナムさんが歩み寄ってきた。
「確かに私たちは守護騎士だが、闇の書などの守護騎士ではない。ましてあなたの家族でもない。他人の空似ではないか?」
「そんなことないっ! 私が私の家族を見間違えるはずないっ!」
必死に呼びかけるはやてちゃん。だが、彼女の叫びは届かない。通じない。はやてちゃんとシグナムさんの間には絶壁があるように。はやてちゃんの言葉は彼女たちの間にある壁を越えることはできない。
「だが、現に私はあなたなど知らない。今日が初対面のはずだ。名前を知っていることには驚いたが……」
「嘘やっ! 嘘やっ! 嘘やっ!」
シグナムさんの言葉を必死に否定するはやてちゃん。まるで、その言葉を受け入れてしまえば自分が壊れてしまうと言わんばかりに首を振りかぶって彼女の言葉を否定していた。否定するはやてちゃんの声は、もはや涙声だった。ずっと待っていた家族にようやく出会えたと思ったら自分を否定されたのだから、泣きたくなる気持ちはわかる。
僕には彼女にどうやって声をかけていいのかわからなかった。それはシグナムさんも同様だったらしい。立ち尽くす僕とシグナムさん。その動きのない空間を動かしたのは、はやてち
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