第三幕その六
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第三幕その六
「何故こんな時間にこんなところに」
所謂体面を気にするパターンの上流階級にある者特有の猥雑なものを嫌う風潮をそのまま出しながらこの場にやって来たのはそのファニナルであった。彼は男爵の姿を認めるとその面持ちをさらに出して彼に対して問うのであった。
「何故貴方がこんな所に?」
「どうしてここに」
「どうしてここにと言われましても」
ファニナルの方で困った顔になって彼に問い返すのだった。
「貴方が私を呼んだのではありませんか」
「わしが!?」
「そうです。それでどうしてその様なことを」
「何が何だか」
「あのですな」
タイミングを見事に見計らって警部がまた話に入ってみせてきた。
「この方は一体」
「あっ、まあこの方は」
立場がさらに苦しくなった男爵は何とかこの場を取り繕おうとまた嘘をつくことにした。
「唯の知り合いです」
「どちら様でしょうか」
「ファニナルです」
男爵が答える前に本人が答えてしまった。男爵はあっと思わずその口を大きく広げてしまった。
「フォン=ファニナルです」
「むむっ、それではですな」
警部はそれを聞いて彼なりに事情を察して述べた。芝居のうえで。
「こちらの方のお父上ですな」
「こちらの?」
そう言われても訳がわからずまた怪訝な顔になるファニナルであった。
「何のことでしょうか」
「いやいや、何でもありませんぞ」
男爵はまだ必死にこの場を取り繕おうと努力するのだった。
「御気になされずに。さあ帰りましょう」
「実はこちらの方がですな」
しかしそれを逃がす警部ではなくまた男爵を指差してファニナルに対して言うのであった。それを見た男爵はまた非常にバツの悪い顔になる。彼にとってはまさに惨劇だ。
「こちらの娘さんが貴方の娘さんだと」
「えっ、私のですか」
「そうです」
ここでまた。アンニーナが子供達にチョコレートをやってから男爵にけしかける。
「パパ!パパ!」
「うわっ、まだいたのか!」
「パパ!?」
それを聞いてまたファニナルが顔を向けた。
「パパとは!?」
「ですから何でもありません」
男爵はもう泣きそうな顔になって言い繕う。
「わしにはもう何が何だか」
「この人の妻です」
絶好のタイミングでアンニーナが大芝居を打つ。
「そしてこの子達は私達の」
「何っ!?正式に結婚しておったのか!?」
「違う!」
男爵は思わず絶叫する。
「わしはまだ。それに子供は一人だけしかいないし」
「一人だけとなると」
「この子供達ではない!」
「いえいえ、まだまだ一杯いますぞ!」
「よっ、もてますな!」
「もててもおらん!」
必死に周りの囃しに言い返す。
「どうしてだ。何が何だか」
「むっ、ここで」
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