第三幕その五
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第三幕その五
「私ですが」
「むっ、貴方は」
「まあ話を聞いて下さい。静かにさせて」
「わかりました。それでは」
オクタヴィアンの言葉に頷いて。すぐに笛を吹いて皆を沈静化させた。この辺りは流石であった。
「さて、それではですな」
「はい」
皆警部に顔を向けて話を静かに再開させた。
「ここの主は」
「私です」
店の主人が答えた。
「そうですか。それでこの騒ぎは」
「この男爵様が」
「ふむ」
主人の言葉を受けて男爵に顔を向ける。
「こちらの大きな方がですね」
「そうです、その方がですね」
見れば男爵は必死に鬘を探している。しかしどういうわけか見つからない。
「レルヒェナウ男爵様といいまして」
「知らないのですが」
「何っ!?」
自分の名前が出て慌ててそちらに顔をやる。
「わしを知らないと」
「少なくとも証明はできませんが」
「下に従者達がいるぞ」
男爵はそう言われてすぐにこう答えた。
「それはな」
「おや、ですが」
「何じゃ」
すぐに警部の様子がおかしいのを察して問い返す。
「何か不都合でもあるのか?」
「下にいる客は皆酔い潰れておりますが」
「ううむ」
男爵はそれを聞いて難しい顔になった。それと共に腕を組んで考え込むふうになった。
「何とも。困ったことじゃ」
「他に証明できる方法はおありでしょうか」
「この者じゃ」
次に出してきたのは丁度いいタイミングで隣にいたヴァルツァッキであった。無論これはヴァルツァッキの方からも狙ってのことである。
「この者ならわしが誰かを証明できるぞ」
「いえ、私は」
しかしここでそのヴァルツァッキがとぼけるのであった。オクタヴィアンはそれを見て内心よし、となる。しかし顔はマリアンデルのままなのだった。
「それはできません」
「何だと!?」
「果たしてこの方が男爵様かどうか。わたしにはわかりかねます」
「何と。貴様どういうつもりだ!?」
「まあまあ落ち着かれて」
また警部が男爵を宥める。わかってはいるから落ち着いたものである。
「ところでこちらの若い娘は」
「ああ、この娘か」
まだ彼はマリアンデルと思っている。だから娘なのだ。
「何でもない。わしが面倒を見ておってな」
「貴方がですか」
「何かあるか?」
「あります。貴方の身元がわからないというのに」
どうしてそれで保護なのだと。そう言いたいのである。
「どうして保護なぞをできましょうか」
「ではこの娘の名前を言おう」
らちが明かないと見てこう言い切り出してきた男爵であった。
「よいか、この娘の名はファニナルという」
「おいおい、またこの人は」
「言っちゃったわね」
ヴァルツァッキとアンニーナは男爵のとんでもない嘘に思わず呆
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