第三幕その四
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第三幕その四
「お気の毒な奥様」
「奥様も何も」
男爵は唖然としながら言葉を発する。
「わしはまだ結婚も」
「パパ!」
今度は四人の小さな子供達まで出て来ていた。そうして男爵にまとわりついてきている。
「パパ!パパ!」
「わしは御主等のパパではないぞ!」
「嘘を申し上げなさるな」
「そうです」
周りから男達が言う。
「ですからお認めになって下さい」
「わしは子供は一人だ」
男爵は慌てて釈明する。
「女好きだが。ちゃんと認知は」
「嘘です」
しかしそれはアンニーナが否定する。
「その証拠に私は」
「わしはそなたなぞ知らん!」
ムキになって否定する。
「それで何をだ!」
「さて」
喧騒の中でマリアンデルはオクタヴィアンに戻っていた。その顔でヴァルツァッキに問い掛ける。実は彼とアンニーナがオクタヴィアンが買収して取り込んでいるのだ。
「ファニナルさんの方は」
「万事怠りなく」
「ならよし」
それを聞いて微笑む。その間にも喧騒は続いている。
「パパ!パパ!」
「さあ男爵、お認めになって下さいまし」
「早く!」
「だから知らん!」
男爵は必死になって否定する。
「わしはこんな女は!」
「ああ、酷い!」
アンニーナは今度は嘘泣きに入った。
「何という惨いお方!」
「重婚は重罪ですぞ!」
「神に反します!」
「風紀警察に通報を!」
「今度は風紀警察か!」
いい加減男爵も嫌になってきていた。
「何故どうもこうも。わしは潔白だ!」
「潔白なら御証明を!」
「さあ!」
「わしはカトリックだ!」
怒って宣言した。
「プロテスタントも領内では認めておる。しかしあくまでカトリックだ!」
「ではやはり」
「そうですな。重婚のかどで」
「だから何故そうなるのだ」
うんざりした顔になっている。
「警官を呼んでくれ。早く」
「はいはい」
ヴァルツァッキ達は頷きはする。しかし。
「ではすぐに風紀警察を」
「こちらに」
「だから違う!普通の警察を!」
「パパ!パパ!」
「警察ですが」
何故かとんでもないタイミングでここで警官達が部屋に入って来た。警部が二人の巡査を連れて出て来ている。何とも絶妙な、怪しいまでのタイミングだ。
「呼ばれましたが」
「何が起こっているのでしょうか」
「重婚です!」
「違う!」
アンニーナと男爵双方から叫び声があがる。
「私は騙されたんです!」
「こんな女は知らん!」
「何が何だか」
「ああ」
オクタヴィアンがにこにことした顔で警部の方に来た。それからそっと囁く。
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