第二幕その十一
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第二幕その十一
「やはり御主等が入れてその側で飲むのが一番だわい」
「ではまた後で」
「旦那様とご一緒に」
「よいぞよいぞ」
もういつもの男爵であった。そんな彼のところにアンニーナがまた来ていた。
「んっ!?どうしたのじゃ?」
「旦那様」
含み笑いを浮かべて彼のところにそっと寄って囁く。
「実はですね」
「何かあったのか?」
「何かあるから来るのです」
「それもそうか。して何用じゃ?」
「これです」
そっと一通の手紙を差し出すのであった。
「これをどうぞ」
「手紙か」
「そうです。さあ」
「うむ。それではな」
手紙を受け取ってそれを開く。するとそこにはマリアンデルからと書かれていた。
「おっ」
男爵はその名を見てまずは楽しそうに声をあげた。
「これはいい。あの娘からか」
「あの娘!?」
「あっ、何でもないぞ」
にやけた顔であるが従者達に言葉を返す。
「何でもないからな」
「わかりました、それでは」
「それでだ」
そしてあらためて手紙を読むことを再開させるのだった。そこに書いてあることは。
騎士様
私は明日の晩時間があります。貴方様をお慕い申しておりますが奥方様の前ですから中々言えないでいました。
ですがどうか明日の晩に御会いして下さい。
貴方をお慕いするマリアンデルより
「おお」
男爵は最後まで読んでその顔をさらににやけさせた。
「これはいい。明日か」
「明日!?」
「明日に何が」
「その方等には関係のないことだ」
にやけた顔のままで従者達に返す。
「気にするな。よいな」
「むっ、これはまさか」
「女の子と?」
「だから。関係ないと言っておるだろう」
そうは言っても顔は笑ったままである。
「よいな。それで」
「はい、それでは」
「そういうことで」
彼等はそれで黙ることにした。だが男爵はここでさらにアンニーナに対して言うのだった。
「まずはこれを」
「毎度あり」
さりげなく金貨を数枚掴ませた。一応はチップということだ。
「それでじゃ。場所は」
「どうされますか?」
「わしのホテルにしよう。いや」
「いや?」
「居酒屋がいいか」
こう考えを変えた。
「そこにする。店の名前は」
「はい、場所は」
アンニーナに囁いて場所を決める。男爵はもうそのことで頭が一杯になっていた。他のことはもう頭に入ってはいなかった。見事なまでにであった。
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