第二幕その十
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第二幕その十
「御安心下さい。後から便りを寄越します」
「伯爵様・・・・・・」
「伯爵殿」
ファニナルは口をへの字にさせてオクタヴィアンにも言う。
「あまり娘に近付かないで下さい。宜しいですね」
「すいません」
「とにかくだ」
また娘を睨んで言う。
「今は部屋に下がれ。頭を冷やせ」
「・・・・・・はい」
父のその言葉に俯いて頷く。そしてオクタヴィアンに一礼しマリアンネに護られるように付き添われながらその場を後にした。それでまずは一人退場であった。
しかしオクタヴィアンも男爵も残っている。ファニナルは今度は男爵に顔を向けた。
「大丈夫ですか」
「何とか」
あの元気は何処にいったのか声が弱々しい。
「そうですか。ではお飲み物は」
「いや、それは結構」
いつもなら頼むのだが今はそれを頼む元気もないのだった。
「そっとしておいてくれ」
「宜しいですか、男爵」
ここで彼は男爵に対して穏やかな調子を何とか作りながら話すのだった。
「貴女の御親切と御寛容に対して接吻致します」
「わしに対して」
「そうです。娘だけでなく」
恭しく語る。
「この屋敷の全ては貴方のものです」
「わしのものだと」
それを聞いただけでもう機嫌をなおしだした男爵であった。
「真ですかな、それは」
「私とて貴族です」
その誇りはあるのだ。
「嘘は申し上げません。娘にも我儘は言わせません」
「左様ですか。いやいや、それでは」
かなり機嫌を直し従者達に囲まれた中で言うのだった。
「まあお話は後で」
「ささ、トカイを」
「これはどうも」
執事がファニナルに手渡しそのワインを受け取って一杯飲む。ところが持つ手が痛んでそれでまた顔を顰めるのだった。
「痛っ・・・・・・、全く以って」
斬られたことを思い出して歯噛みする。悔しさと憎らしさで苦い顔にもなる。
「こんな目に遭うとはな。訴えるべきか」
「是非そうしましょう」
「旦那様がやられっぱなしでは」
従者達もそれを聞いて彼に言う。
「レルヒェナウの名誉が廃りますぜ」
「ですから」
「まあ待て」
しかし信頼する彼等の言葉を聞くといつもの鷹揚な男爵になった。その鷹揚な様子で言うのである。
「落ち着くのだ。いいな」
「はあ」
「それでしたら」
主の言葉を受けて彼等もまずは落ち着いた。男爵はそれを見届けてからまた言う。
「まあ伯爵殿も去られた。そしてだ」
「そして?」
「若い娘の我儘はいつものこと」
いつもの余裕も見せだしていた。
「これはこれで面白い話ではないか」
「左様ですか」
「その方らも知っていよう」
得意げな顔で従者達に問う。
「気の強い方が女は可愛いものじゃ」
「確かに」
「言われてみればその
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