第二幕その九
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第二幕その九
「誰の血であっても。血が流れるのは見たくもない!」
「その通りです」
「ですから旦那様」
つまりは彼等の血も見たくはないというわけなのだ。
「ここは落ち着かれて」
「怪我はわし等が」
「またこれは随分」
マリアンネはそっとゾフィーの側に来て彼女を守りながら言う。
「大変なことになりましたけれど」
その騒ぎの中に戻って来たのは。騒ぎを聞いたファニナルであった。彼も今日は彼自身が思っていたよりもずっと忙しい日を送る破目になっていた。それを言葉にも出しながらたまりかねた顔で言うのだった。
「今度は何なのか。決闘なのか!?」
「その通りです」
「旦那、ここはどうか」
男爵の従者達がここでファニナルに言うのだった。
「お医者様を読んで下さい」
「どうか」
「わかりました。しかし」
彼は少し憔悴した様子でここで呟くのだった。
「こんな騒ぎになるとは。伯爵殿」
「はい」
オクタヴィアンは剣を収めてから彼に一礼した。
「こんなことを期待してはいないのですが」
「申し訳ありません」
オクタヴィアンもこれには素直に謝罪する。
「私としても悲しむべきこと。ですが」
「ですが?」
「このことに関する真実は娘さんから御聞きになるでしょう」
「ゾフィーから」
「そうです」
ゾフィーに顔を向けた彼に答える。
「その通りです」
「お父様」
そしてゾフィーもここで父に顔を向けて言うのであった。
「あの方のお振る舞いは間違っています」
「一体何を言っているんだ」
ファニナルは娘の言葉に顔を顰めさせる。そうして二人と男爵達の丁度真ん中に座って話をするのであった。マリアンネと彼に従う執事達がその後ろについた。
「この方は御前の夫になるんだよ」
「嫌です」
またきっぱりと言い切ってきた。
「この方は」
「馬鹿なことを言う」
その後ろから医者が来た。そうして男爵の手当てにかかった。手当てといっても腕を少し切っただけなので実に簡単なものであった。
「薔薇の騎士が剣を抜くわ花婿は傷を受けるわこの騒ぎだわ。確かにわしは成り上がり者だ」
その自覚はあった。
「しかし。だからといって名誉がないわけではない。その名誉にかけて言おう」
「何をですか?」
「男爵様と結婚するのだ」
そう娘に命じた。
「わかったな。例えこの方がなくなろうとも」
「ふむ」
その右手で医者が男爵を見ながら声をあげていた。
「大丈夫です」
「そうか、よかった」
「旦那様は御無事か」
従者達がそれで喜んでいる。ゾフィーはそれも水にやはりオクタヴィアンに守られつつ父に言葉を返すのだった。それまでにない強い声で。
「例えこの人が死のうが生きようが」
「どうだというのだ?」
「結婚は
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