第二幕その七
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第二幕その七
二人になるとゾフィーはまずほっとしたように大きく息を吐き出した。そうして言うのだった。
「御願いします」
またオクタヴィアンに訴えかけてきた。
「どうかこの私を」
「はい、それではですね」
「何が」
「まずは貴女御自身をお助けすることです」
こうゾフィーに告げるのだった。
「私をですか」
「そうです」
彼は言う。
「それでですね。まずは」
「どうすればいいのでしょうか」
「まずはです」
オクタヴィアンは真剣な顔でゾフィーを見詰めていた。そうして囁くのであった。
「私達二人の為に私達を護るのです」
「私達を」
「そうです」
そう答えて頷く。
「貴女の為に、そして私の為に貴女は御自分を御護り下さい。そして今の貴女を見失わないようにして下さい。宜しいですね」
「わかりました」
目に涙を湛えてオクタヴィアンの言葉に頷く。それから彼を強く抱き締めた。
「憂いに心を支配され絶望にかられ。その貴女の信頼する友人として今ここにいます。何という幸福なことでしょうか」
「貴女がいればもうそれだけで憂いも絶望も消えます」
ゾフィーもまたそれに応えて言う。
「何が起ころうと押し黙り木の枝の鳥の様に身を隠して止まって貴方がここにいることを感じたい」
「私をですね」
「そうです」
また彼の言葉に応えた。
「貴方が喜んでここに来られたか危急で来られたか。ですが」
彼は想うのであった。
「何時か美しい夢の中でそれが起こったような」
「そう想われますのね」
「はい。感じませんか、それを」
「感じます」
そしてゾフィーはそれに頷いた。
「そのことを。不安に襲われなければならない筈なのにそれがなくて。苦しみも消えて」
「どうなっているのですか?」
「言葉で言い表せと仰られても言えない。けれど貴方が今ここにおられるだけで」
「宜しいのですか?」
「はい」
うっとりとした顔と声で頷いてみせた。オクタヴィアンを抱いたまま。
「貴方の御顔が。若々しく明るい目が私に注がれて優しい表情が癒してくれる。けれどそれすらも判らなかった」
「そうだったのですか」
「けれど今は側にいて下さい。それが私の願いです」
そこまで言ってまだ抱き締め合う。そこで急にある二人が部屋に飛び込んできた。元帥夫人のところで男爵に声をかけていたあのイタリア人、ヴァルツァッキとアンニーナであった。
「男爵様、男爵様!」
「大変ですよ!」
「くっ、しまった!」
オクタヴィアンは素早くゾフィーから離れて呻いた。
「大変なことになるぞ」
「どうしましょう」
「貴女が心配されることはありません」
再び不安に包まれたゾフィーに顔を向けて安心させるように告げた。
「・・・・・・わかりました」
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