第一幕その十三
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は」
「まるで司祭様みたいだ」
オクタヴィアンは今の夫人の言葉をこう受け取った。
「何が言いたいのか。僕には全くわかりません」
「もう行って」
今度は突き放した。
「私は教会に行くから」
「教会に」
「そして伯父様のところに。グライフェンクラウの伯父様のところに」
「あの伯父様ですね」
「そうよ」
彼のことはオクタヴィアンも知っていた。
「もう身体が満足に動かなくなっているから私が顔を見せると喜んでくれるの。だから」
「そうですか」
「午後に使いをやるわ」
オクタヴィアンにも気遣いを見せる。
「プラーターへ行くかどうかね」
ウィーンの公園のことである。
「私の馬車の傍に馬を持って来て。けれどそれまでは」
「それではまた」
オクタヴィアンもフランス風のお辞儀をして夫人の前を後にする。夫人はその彼を見送るが暫くしてあることを思い出してまたその顔に憂いを漂わせるのだった。
「最後に接吻を」
忘れてしまっていたのだ。それでベルを鳴らして従者達を呼ぶ。しかし。
「もう行ってしまわれました」
「もうなの」
「はい。門の前ですぐに馬にお乗りになりました」
彼等はこう答える。
「馬丁が待っておりましたので」
「まるで風の様に速く馬にお乗りになり」
彼等はこう夫人に述べる。
「そのまま去られました」
「そう、わかったわ」
それを聞いて頷く。オクタヴィアンは朝に来たことになっていたので話はこれで済んだ。だがここでまた黒人の少年を呼んで彼に手渡すのだった。
「これを。オクタヴィアン伯爵のところにね」
それは一通の手紙であった。
「わかったわね」
少年は無言で頷いてその場を後にする。夫人はそれを見届けてから大きく溜息を吐き出しソファーに座り込んだ。それでその場は憂いの中に沈むのであった。
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