第三部第四章 命運は決するその一
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さてサラーフであるが会戦があることはもう皆知っていた。その結果を見守るだけである。
「御前はどっちが勝つと思う?」
ナベツーラは自らの事務所に自分の取り巻き連中を集めていた。そして彼等に尋ねた。
「それは決まっているではありませんか」
醜く太り重い瞼を持つ色の黒い男が答えた。ナベツーラの狂信者と言われるトクンである。慈善家という触れ込みだがその実は福祉を利権にしている男である。
「オムダーマンが勝ちますよ」
「というかあの連中に負けてもらわなくてはね。我々が政権に就くことはできません」
スキンヘッドにした痩せたガチャメの小男が下卑た笑いを出しながら言った。この男の名はテリームという。感情的な暴論を以って反対派を罵倒することがこの男の得意技である。普通の者ならその出鱈目な論理と浅はかな思考、そして愚劣そのものの言葉に閉口するのだがマスコミでは『正義を愛する毒舌家』である。
「まあ奴等は負けてもらわなくては。何なら情報を流しましょうか?」
薄く汚い髪を持つ顔中疣だらけの男が言った。トクンやテリームも醜悪な顔立ちだがこの男の醜さは際立っている。この男の名はエジリームという。ナベツーラを賛美するマスコミ達の頂点に立つ男である。
「いいな、それは」
ナベツーラは葉巻をふかせながらその言葉に対し頷いた。
「どんどん流せ。何処に向かっているかまでな。オムダーマンの方にもよくわかるようにな」
「わかりました」
エジリームは無気味で醜い笑顔で答えた。
「選挙の方は上手くいっているのだろうな」
「はい、それはもう」
トクンが答えた。
「資金は豊富にありますし。サレムへのネガティブキャンペーンも順調です」
「そうか。ならいいんだ」
ナベツーラはそれ以上聞かなかった。どうやら選挙には自信があるようだ。
「いいか、勝つ為には手段を選ぶな」
「それはもう」
「どんな汚いことをしても構わん。スキャンダルを次々とでっち上げろ」
「はい」
それにはエジリームも頷いた。
「人を貶めるには下半身からだ。たとえ嘘でもそいつの名声は確実に落ちる」
「ですね」
「下手な汚職より効果がある。そうだな、サレムが幼女を犯しているってのはどうだ」
「それはよろしいですね」
トクンとエジリームはそれを聞いて太鼓判を押した。サラーフにおいては幼児虐待が最も忌まわしい悪行の一つと考えられている。殺人と並ぶ程である。
「そしてテリームはこれまで通りテレビで相手を攻撃しろ。容赦はするな」
「お任せ下さい」
テリームは下卑た笑いで答えた。
「どんどんやれよ、買収も怠るな。それはトクンがやれ」
「はい」
「工作はエジリームだ。マスコミを総動員しろ」
「わかりました」
「これでいい。いいか、政権についたら俺達の思うがま
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