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星河の覇皇
第三部第三章 獅子身中の虫その七
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敬礼した。そして彼は元帥の階級を有り難く受け取った。
 彼の防衛計画は的確であった。これによりエウロパの国防は大きく変わることとなった。

 この頃サラーフでは睨み合いが続いていた。ムスタファ星系に足掛かりを置くオムダーマン軍とサラーフ軍が対峙していたのである。
 対峙といってもサラーフはいまだに焦土戦術を行なっていた。だがこれは国内のマスコミには甚だ不評であった。
「何故逃げるのか!」
「今の軍は腰抜けだ!」
 こうした言葉が新聞の一面やテレビに次々と出た。
 そしてそれに便乗するようにナベツーラ派が威勢のいい言葉を言う。マスコミは彼等を英雄視して政権に相応しい、とまで言った。
「マスコミの公共性はどうなったのだ」
 こうしたことを言う人もいた。だがそうした心ある言葉はマスコミの大声と偏向した報道により掻き消された。最早サラーフはマスコミに完全に牛耳られていたのだ。
「馬鹿者共が」
 サラーフの首相であるサレムは自身の執務室で新聞を読みながら忌々しげに呟いた。その一面には政府と軍焦土戦術を激しく非難する言葉が羅列していた。
 それだけではない。そこにははっきりと書かれていた。
『ナベツーラを政権に』
 と。何処までも公共性を無視していた。
「全くです。あの連中に政治や戦略がわかる筈もありませんが」
 サレムの前に立つ男が同意した。軍務大臣のハルージャである。
「それはわかっているつもりだが。しかし連中はナベツーラがサラーフを救うと本気で思っているのか!?」
「どうやらそのようで」
「何もわかっとらん」
 サレムはそう言って首を横に振った。
「あの連中にサラーフを救うつもりなどない。あるのは権力を手にすることだけだ」
 無論彼等も権力への執着はある。だがナベツーラ達程ではなかった。そして責務もあった。
「ですがマスコミの突き上げは日増しに強くなっております。しかもそれに乗じてナベツーラ達が」
「それもわかっている」
 サレムの表情は晴れなかった。
「止むを得ん。兵を動かすとしよう」
「はい」
「確かムスタファに援軍が送られているそうだな」
「そのようですね。ブーシル方面からですが」
「そうか、ブーシルからか」
 サレムはそれを聞くと考え込んだ。
「今どれだけの艦隊が動けるか?」
「二十個艦隊程です」
「まだまだ二十四個艦隊に戻すには時間がかかるな。動くのはそれからにしようと考えていたが」
「残念ですが」
 二人は口惜しげに呟いた。
「だが仕方がない。まずは些細なものでも勝利を得る必要がある。マスコミとナベツーラ達を黙らせる程度のな」
「ですね。では七個艦隊程用いて援軍を叩くとしましょう」
「そうだな。では今すぐに動ける艦隊を選んでムスタファ星系とブーシル星系の間に向かわせよう。す
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