第三部第三章 獅子身中の虫その七
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「ニーベルング要塞群は確かに強力です。エウロパ本土防衛の要であることは言うまでもありません」
それはモンサルヴァートもよくわかっていた。
「ですがそれに完全に頼りきるのはよくありません。他がおろそかになってはもしもの時に対処できません」
「成程」
ラフネールはそれを聞き頷いた。
「当然ニーベルング要塞群の増強も考えています。しかしそれだけではならないのです」
モンサルヴァートは言葉を続けた。
「この首都オリンポスを中心とした防衛システムを完成させたいと考えています。そして有事には何としても敵の侵攻を防ぎます」
「敵とは連合のことですか?」
「はい」
それは言わずもがな、であった。
「連合とは一千年もの敵対関係にあります。そして彼等と我々の国力差を考えますと最大の脅威です」
「卿は連合がこのエウロパに侵攻して来ると考えているのですか?」
「その可能性はあります。もし中央政府にそうした好戦的な政権がつく可能性が」
「あらゆるケースを考えておく必要があると」
「その通りです、そうでなくては国は守れないかと」
「成程、よくわかりました」
ラフネールはそこまで言うと大きく頷いた。
「今回の計画は貴方に一任しましょう。予算の件は議会に話しておきます。おそらくかなりの額が必要になるでしょう」
「申し訳ありませんが」
「いえ、いいです。国防の為には止むを得ません」
軍事関係はかなり金がかかるものである。しかも出費ばかりで収入はない。経営という点から考えるとこれ程不健全なものもないだろう。
だが金をかけずにはいられない。さもないと国が守れないからだ。それがわかっていない者は政治を語る資格がない。軍事不要の政治、それは最早宗教的な話である。
「それでは期待していますよ」
「有り難うございます」
モンサルヴァートは礼を述べた。
「あともう一つお話しておきたいことがあるのですが」
「何でしょうか」
「はい」
ラフネールは机の前に向かった。そしてその上にあるものを手に取った。
「これを卿に」
そう言うと彼にそれを手渡した。
「これは・・・・・・」
それは階級章であった。元帥のものである。
エウロパの軍制度において元帥は第二位の階級である。軍においては数十人、時には百人程存在する。
「卿は統帥本部長なのです。元帥になるのも当然でしょう」
「しかし私は元帥になるにはまだ」
早いのではないか、と言おうとした。年齢的な問題である。
「いえ」
ラフネールはそれに対して首を横に振った。
「卿のこれまでの功績を考えても、今の職務を考えても当然です。これは既に私が決めたことなのです」
「総統が・・・・・・」
「はい、これからも期待していますよ」
「わかりました」
モンサルヴァートは
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